ARCADIA

□商人が中心の国
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港沿いの石造りの大きな館。それは貴族の城ではない。商人ギルドのギルド長の私邸であり、ギルドの詰め所でもある
「マルコ、王から伝言よ。帝国がデイモンへの侵攻計画を進めている事への見解を聞かせてほしい、って」 王族の末席に名を連ねるマリアは、王家を中心とする貴族院と、商人ギルド長との橋渡し役をしている。
「いやいやいや、マリア、うちみたいな弱小国なんかが、帝国に口つっこめないっ、ちゅうの、わかってるよね?」
商人ギルド長、マルコは大量の船荷札をチェックしながら、呆れたようにため息をつく。
「帝国がデイモンに侵攻したら、香油の取り引きが途絶えるわよ。あの特別香りがよくて量が採れる薔薇は、デイモンの地でしか出来ないんだから。うちの王族も、他国の王族もあの香油を使った香水の愛用者が多いのよ。香油が入らなかったら、調合と販売の商人は喰いっぱぐれるわ。つ・ま・り!うちのギルドにも負担がかかるのよ」
「い、いやいや、ほら、マリアは、貴族院だし…」
「無能な貴族院の連中より、ギルドが大切よ。」
ふん、と鼻を鳴らしてそっぽむくマリアに、マルコは髪を撫で付ける。
「いやいや、まあ、心配しないわけぢゃないけどね…あの蛭魔女王さんだし」
「交渉なら心配しないわよ、あの蛭魔女王ですもの。ただ、帝国は侵攻しようとしているのよ?あの大国が、よ。どうなるのか、心配だわ」
「ん〜、だからってうちがなんか出来る、ってわけないっちゅうのね。うちとデイモンのあいだにゃ、ホワイトナイツ、ちゅう強国もいるしね…ホワイトナイツはどっちにつくのかねぇ」
マルコは大袈裟に溜め息をついて、天井を仰ぐ。
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