ARCADIA

□流砂のように
1ページ/8ページ

盤戸国の街があった、華やかで賑やかだった場所は、今や瓦礫と焼け焦げた匂いに満ちていた。
「ムサシ、飯の支度するか?」
ムサシ、と呼ばれた少年はこくん、と頷き水場を探す。
デイモン国には、花作り以外に産業はない。その為、若い男達は他国に出稼ぎに出る。まだ十にもならないムサシは、父親とその仲間と共に、大工として、時に傭兵として諸国を回っていた。同年代の子供に比べ、体格も良く、落ち着いた性格ではあるが、まだまだ出来ることが限られているため、今の様に瓦礫の撤去や壊れた橋の応急措置には参加せず、食事の準備などの雑用を進んでしていた。 水場を見つけ、持ってきた皮袋と大きな鍋に水を汲み、立ち上がったムサシの目に、ボロ布の塊が飛び込んできた。正確には、ボロ布を被った、小さな子供達。疲れた表情で、見るともなしにムサシを見ている。 ムサシは少し考え、子供達に近づく。と、赤い髪の少年が、他の二人を庇うように前に出る。
「…今から飯の用意する。着いてこい」
何を言われたのか、一瞬解らなかったのか、きょとん、としたが直ぐに警戒感を顕にする。
「…おれは帝国軍のもんじゃねぇ。こんなガキが軍人のわけねぇだろ」
ムサシの言葉に、顔を見合わせていた子供達はおずおずと歩き始めた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ