Novel:Black

□+ヘルフラワー+
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糸色先生は花のようだ。クチナシの香りが漂うだけの閑静な公園のベンチにふたりきり。読んでいた書物のせいか、はたまた濃厚な芳香に酔ったのか。兎に角、ふとそう思ったのだ。


「先生」


綺麗な花には棘がある。私に触らないでという鳳仙花。とても繊細な自己防衛だ。


「はい、なんでしょう?」


鈴蘭には毒が。美しい花を咲かせるジギタリス。風に揺れるか弱き姿からは想像もつかない、内包された配糖体の作用。


「先生は、花のようですね」
「は?」


驚きのあまり開いた口はロイヤル・レッド。
すべての妖艶な魅力は人の心を甘やかに誘い、そしてゆっくりと侵蝕していく。



死の島に流れ着いた少年。



+fin+


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