Novel:Blue 3

□+ひかり+
1ページ/1ページ


+ひかり+



毎度、これだけは、慣れない。


「じゃーな」


万事屋から私の家へ、そしてまた、万事屋へ。スクーターを半回転させた銀時は、ヘルメットを被りなおし、ひらりと片手を振った。
冷たく澄んだ、月のない夜。灯りは隣家の街灯が小さくひとつあるだけだから、少しだけ寂しさを滲ませても、表情に悟られることはないだろう。声音さえ気をつければ、たぶん、気づかれない。
――大丈夫。また来週、会える。離れがたい気持ちを胸の奥に押しこめ、息を、深く吸った。


「うん、送ってくれてありがとう。お休み」


踵を返そうとして、静止を促す科白とともに、右腕を掴まれた。再び銀時と向かい合う。


「お前さあ、俺が気づいてないとでも思うわけ?」


心臓が跳ねる。ぎゅっという表現が適切だと思えるくらいに、しっかりと、銀時に抱きしめられた。煙草とキャンディーが混ざったような、甘苦い匂いが鼻腔を掠めた。安心できる。温もりが心地よくて、もっと味わっていたくなって。私は眼前にある逞しい胸板に、頬をよせた。


「質問でぇす。俺はお前の何でしょーか?」
「……彼氏、です」
「だろ? 彼女を寂しくさせないようにすんのも、彼氏の務めなんだよ」


だから、そんなに泣きそうな顔すんな。と、銀時は私の背を優しく叩いた。


「んじゃ、寂しがり屋な子のために、銀さんが添い寝をしてやっからなァー」


銀時はヘルメットを外し、道路に止め置いていたスクーターを家に寄せる。それから、どこからか取りだした鍵を、鍵穴に入れてまわした。私が以前渡した、合鍵を使って。ドアが開くと同時に、はっと我に返る。


「………えっ!?アレ? どういうこと!?」
「大丈夫、問題ない、問題ない。この銀さんが責任もって、お前を寝かしつけようじゃねえか。まァ、今夜は寝れるかどうかわかんねェけどな」
「ちょ! 待「ハイハイ、中入れー」



+fin+

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ