Novel:Blue 3

□+ウィズ・ユー+
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僕は返却された本を棚に置いてカウンターに戻ってくる。芳賀はまだ、椅子に座ったままそこにいた。傍に立つと、「青山。俺、もう帰りたい」と駄々を捏ねられる。僕は苦笑して、図書室の机に突っ伏す芳賀の頭を撫でた。


「芳賀はこれからでしょ?」


壁にかかった時計を見ながら、僕は言った。
昨日から、担任との二者面談が放課後に行われているのだ。成績や進路について、先生と約十五分間話し合う。面倒なのは否めないが、親が呼ばれないだけマシだと僕は思っている。
下方に視線を戻せば、組んだ腕から顔をあげた芳賀が口先を尖らせて、ふてくされたような表情をしている。あ、ちょっと可愛いかも。


「青山が帰るなら俺も帰る」
「僕、昨日終わったし。久藤が面談してる間だけ、当番を代わってるだけだし」
「俺と一緒に、もう一回先生と面談しねえ?」
「嫌だ」


再度、芳賀は腕に顔を埋めた。「青山がつれない…」と小さく嘆く声が聞こえる。そろそろ、久藤が面談を終えてこっちにやってくるころかな。そうしたら、次は芳賀の番だ。僕はまだ何かを呟いている芳賀に声をかける。


「ここで待ってるから、早く行ってきなよ」


ばっと芳賀が顔をあげた。一瞬のうちに距離を詰められ、肩に手を置かれる。息がかかるほど、芳賀の顔が、近い。


「本当?」
「本当」
「絶対?」
「絶対」
「誓う?」
「誓う」


そんなやり取りがあって、漸く芳賀は面談が行われる教室へと向かった。扉が閉まるのを見届けた後、僕は一息つく。そうして芳賀を待つべく、目の前の椅子に腰をおろした。



+fin+

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