Novel:Blue 3
□+Only+
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「はう〜…」
また女の子に告白されてるなぁと、とある教室の出入り口から覗かせた顔を引っ込めて、理緒は溜息をついた。
さり気ない優しさは、必ず誰かが見ているもので。
道端に転がっているペットボトルを拾ってゴミ箱に捨てたり、落し物を拾って届けておいてあげたり、重い荷物を持っている人を見かねて手伝ってあげたり。
「こーすけ君のお人好しっ」
本人は気が向いたからやっただけと言うが、元々面倒見のいいタイプなのだ。
そんな一面を知った女子生徒が、ノートを見せて欲しいから始まり、勉強を教えて欲しいに発展し、付き合って欲しいと告白するのだ。
『あの、浅月くん、その…好きです!!私と付き合ってください!』
ほら、また。
「あー…」
がしがしと、後ろ頭を掻いているのだろう。
放課後の静かな室内に、微かな布擦れの音だけが響く。
「ありがとう」
理緒は、壁の向こう側で目を伏せる。
その場を離れても良かったが、理緒の足は縫いとめられたように動けずにいた。
「けど、悪い」
最後まで気丈に振舞っていた女子生徒は、涙が零れる前にと廊下を駆け出し去って行く。
ふ、と吐息した香介は出入り口で体育座りをしていた理緒に声をかけた。
「何でそんなにむくれてんの」
「ふーんだ」
「嫉妬してくれてんの?」
そろりと視線を目の前の人物にやれば、メガネの奥の瞳が嬉しそうに細められていて。
不意に伸びてきた手のひらに、理緒は口元を綻ばせた。
「お前以外に興味ねーから。安心しとけ」
どうして、たった一言でこんなにも満足してしまうのだろう。
しっかりと繋がれた手を引かれ、二人分の異なる足音が廊下に響く。
あたたかな胸中はそのままに、表情をちょっとだけ引き締めた理緒は、いつもの口調で言葉を投げた。
「こーすけ君のくせに生意気!」
+fin+