Novel:Blue 3

□+当たり前のミライ+
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年々行事が混ざり合っているなと思うのは、スーパーにカボチャスイーツが多く並び始めた頃に、クリスマスケーキの予約を促すポスターを目にした時だったりする。


「ハロウィンもまだだというのに、随分と気の早い宣伝ですねえ」
「囲い込みは迅速な方が良いんだろ…って、あんた何で居るんだ」
「鳴海家の夕食にお呼ばれしようと思いまして♪」


にっこにこと満面の笑顔のひよのに、歩は掴んでいた玉ねぎをうっかり投げそうになった。
親子連れが多く賑わうスーパーで注目を集める行為はしたくはないので、早々に文句を喉の奥に押し込める。


「既にメニューは決まっているから、あんたのリクエストは聞けないぞ」
「分かってますよぅ。卵の賞味期限が近くて、鶏肉も冷蔵庫にありますから、今日は親子丼にするつもりでしょう?」


自宅の冷蔵庫の中身や期限まで把握されていることに、ゾッとする。
情報屋の彼女だが、いくら何でも子細に過ぎてやしないかと背中に冷や汗が流れた。


「鳴海さんは今年のクリスマス、どう過ごされるんですか?」


スーパーから鳴海家への道すがら。
夕日に照らされて輝くおさげ髪を片手で弄りながら、ひよのは何気なしに問いかけた。


「予定は無いが、予想は出来る」


きょとり、と大きな瞳をひとつ瞬かせて、ひよのは小首を傾げる。
歩の横顔は、普段通り穏やかな無表情のままだ。


「どうせあんたと一緒だろうよ」


どうせって何ですかっ。
怒りを覚えかけたけれど、彼の日常の中に私という存在が馴染んでいることに嬉しくなって絆されてしまう。


「プレゼント交換でもしちゃいますか」
「無用の長物しか寄こさなさそうだから却下だ」


変わらずの表情でそう返す歩に、ひよのはぶり返した苛立ちを拳にこめて、歩の肩口に一足早いプレゼントを叩きつけてやった。



+fin+

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