Novel:Blue 2

□+仲良し+
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突然の来訪者にのろのろとした足取りで玄関へと向かう。非常に出たくないのだが、ノックの音が聞こえ(因みにインターホンは正常に鳴るはずだ)、加えて鳴海さーんなどと大きな声が聞こえては出ないわけにはいかないだろう。近所迷惑だ。


「こんばんは、鳴海さん!」


満面の笑みを浮かべたひよのを見るなり、歩は心の底から嘆息した。
このまま無視をして、やはり見なかったことにしようか。しかしそう考える間もなく室内に入られて、迷う必要がなくなってしまった。仕方なく、ドアを閉める。


「うわあ、美味しそうです! 鳴海さんはいいお嫁さんになれますね」
「俺は男なんだが」


我が物顔でリビングへと向かったひよのは、用意された一人分の夕食を見て声をあげる。いそいそと席につく彼女に最早文句を言う気さえ起こらず、歩は急遽もう一人前を追加する羽目になった。


「まったく…、今日来るなんて聞いてなかったぞ」
「鳴海さんがお家にひとりぼっちらしいと小耳に挟みましたので。まどかお姉さんは事件で呼び出されてしまったのでしょう?」


茶碗に白米をよそりながら、何故知っているんだと胸中で呟く。愚問だ。彼女の情報収集能力は高く、並大抵ではない。――その方法はともかくとして。


「ひとりだと折角の美味しさが半減するじゃないですか」


今まで考えたことのない台詞に、思わず目をまるくする。ひとりで過ごすのは慣れているし、姉が急に発生した事件で飛び出していくのはままあることだ。
なのに何故、さらりと言い放たれた彼女の言葉が嬉しいと感じてしまったのだろう。


「――…まあ、な」
「それに正直なところ、鳴海さんの手料理が食べたかったというのもありますし」
「………」


さあ、いただきましょう!
ひよのは両手を胸の前であわせてから、良い具合に味のしみた肉じゃがに箸をのばした。綺麗に切り分け、口に運ぶ。本当に美味そうに食べる奴だ。
歩は一口食べる毎に褒める彼女をいつものように軽くあしらいながら、たまにはこんな風に賑やかな食卓も悪くないかと微笑した。



+fin+

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