Novel:Black
□+見果てぬ夢の彼方+
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熱い湯を浴びながら、アイズは己の手首を見た。
鎖骨の辺りを鏡で見せられて、歌うように囁かれた神の言葉が、まだ耳に残る。
“ラザフォード、一体君は誰のモノだと思っているのかな?”
それからは、酷かった。
記憶も、何もかも洗い流すように、シャワーの勢いを強めた。
アイズが浴室から出てくると、香介がソファに座って俯き、両手で顔を覆っているのが目に入った。
机にあった水差しを手に取り、グラスに注ぎながら、アイズは口を開いた。
「アサヅキ?」
「………」
グラスを置いて、その隣に腰を下ろす。
男ふたり分の重みに、きしりとソファが軋んだ。
「………お前はさ、優しすぎるんだよ…」
本当は自分が寄り添って、支えなければならないのに。
頭に乗せられた暖かな手に、遥か遠くの明るい未来を願わずにはいられなかった――…
+fin+