Novel:Black
□+見果てぬ夢の彼方+
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目覚めたら、昼をとうに過ぎていた。
「ラザフォード……?」
机の上に、置手紙。
内容は“少し外に出てくる”の一言だけであった。
アイズがホテルへと戻ってきたのは、日付が変わってから数分後。
「まだいたのか。」
「ははっ、随分なご挨拶――」
そう言いかけて、香介は口を噤んだ。
容易く折れてしまいそうな、その細い手首に、縛られたような赤い痕。
雰囲気も、本人は隠しているつもりなのだろうが、どことなく沈んでいるように思えた。
「お前、それ…」
「……何でもない。」
シャワーを浴びる、と言ってシャツのボタンを外しながら、アイズは香介の横を通り過ぎる。
ちらり、とその白い肌にいくつもの紅い華が見えた。
「清隆……ッ!!」
薄々、気づいていた。
アイズが時々、清隆に呼ばれていることを。
その、関係も。
近くにあったくず入れを蹴り上げ、香介は呻いた。
「ちくしょう……!!」