Novel:Black
□+想いの丈を贈る時+
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そう声をかけられて、歩と火澄は顔を見合わせる。
と、間近に互いの顔があった。
「「うわっ!?」」
慌てて距離をとるふたり。
ひよのはにやりと笑んで、扉を後ろ手に閉めた。
「どうぞ、私に構わず続けてください。」
「馬鹿を言うな。」
ぴしゃりと言い放つ歩に、火澄も頷いて口を開く。
「そうや、歩と俺のイチャつくんは見世物やないで。」
「黙れ。」
「あっ、歩ったら照れてるん?」
「お前に心底呆れているんだ。」
「素直やないんやから、歩は。」
火澄に付き合うのが面倒になったのか、はたまた否定できなかったのか。
歩は小さく溜息を吐いて、雑誌を鞄に仕舞い込んだ。
ひよのはそれらを尻目に、身支度を整え、机に鍵を置いてドアノブに手をかける。
「じゃあ私帰りますから、ちゃんと鍵閉めていってくださいね。」
それでは、とにっこり微笑んで、ひよのは帰っていった。