Novel:Black

□+見果てぬ夢の彼方+
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眠れない、そう思ってベッドから身を起こす。
香介は傍らに置いてある携帯で時刻を確認すると、まだ午前3時前であった。

ぼんやりとする頭のまま、香介は隣で眠っている想い人へと目を向けた。



「(睫、長ぇな…)」



14歳でピアニスト、クオーターのイギリス人。
名前は、アイズ・ラザフォード。

陶磁器のように滑らかで、雪のように白い肌。
銀糸のような、細い髪。
薄い桜色の――

そこまで、と理性がストップをかける。
今、アイズが眠りに堕ちている、この時ならば、簡単にその身丸ごと奪うことができるだろう。
そもそも愛とはエゴイスティックなものだといっても、相手がそれを受け入れてくれなければ、ただ傷つけるだけだ。



「………くそっ、」



触れたい。
抱き合って、キスをして。
好きなんだ、愛してる。


お前のスベテ、俺にくれないか?


聞こえないのをいいことに、本音をそのまま、胸中で叫んでみる。
そんな我儘は、言えない。
嫌われたくない。





―――ああ、狂いそうだ。






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