Novel:Black
□+想いの丈を贈る時+
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月臣学園には文科系クラブを集めた、四階建てのクラブ棟がある。
その中の一室に、新聞部部室があった。
相も変らぬ放課後、鳴海歩は椅子に座って料理雑誌に目を落としていた。
「お前の分やで。」
かちゃり、と小さく音をたてて、ティーカップが歩の目の前に置かれた。
右斜め前に座るミズシロ火澄に、短く一言礼を言う。
「ああ、有難う。」
カップを持ち、そっとそれに口をつける。
ダージリンの香りが、微かに鼻腔を擽った。
「今日の晩飯、何作るん?」
「和食にしようと考えてはいるんだが。」
そやなー、と呟く。
火澄は椅子を引いて近づき、歩が手にしている料理雑誌を覗き込んで言った。
「ほんなら俺、肉じゃががええ!」
「昨日も肉だったろうが。青椒肉絲。」
「ええやん別に。昨日は昨日、今日は今日や!」
火澄の肉好きには内心呆れながらも、結局は望みどおりに作ってやってしまうのだった。
幸か不幸か、材料は家に全て揃っている筈だ。
そろそろ帰ろうと歩が思うと同時に、部室のドアからひょっこりと、新聞部部長の結崎ひよのが顔を出した。
「あ、お邪魔でした?」