Short Story
□理由を教えてあげる
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旅の途中、次の目的地に向かう前にシェリダンで泊まることになり、一度街で解散したルーク達がそれぞれ自由行動をして過ごしていた時である。
「…あれ?ギンジ?」
「──はい?」
アルビオールでお世話になっているアストンにも挨拶しようと、集会所に向かったルークは、その前を歩いていたギンジと鉢合わせをした。
ルークと同じく集会所に用があるらしく、ギンジはその入り口の扉に手をかけたまま振り向く。
「…って、ルークさん…!久しぶりですね」
「うん、久しぶり。街に戻ってきてたんだな」
「はい。アルビオールの定期点検なんですよ」
「へぇー…そっか」
「ルークさんは?こんなところにお一人で、皆さんはどうしたんですか」
「今は自由行動!みんなもちゃんと来てるぜ」
「ああ、なるほど」
今やギンジはパイロットとしてアッシュと行動をしており、互いに世界中を駆け回っている者同士がこうして顔を合わせる機会は滅多にない。
驚いたように瞳を瞬かせながら声をかけるルークに気付き、ガバッと向き直ったギンジがニコニコと嬉しそうに顔を綻ばせながら受け答えして。
「このまま外で話すのもなんですし、とりあえず中に入りましょうか」
「…ん、そうだな」
集会所の扉を指しながらそう提案してくるギンジに、ルークもまた頷いて同意し、二人は中に入ることにしたのだった。
そうしてルークは当初の目的であったアストンに挨拶をすると、ギンジに案内された集会所の中の一室で腰を落ち着けた。
「──でさ、ギンジ」
「はい、なんでしょう」
「いや、その…いい加減に敬語は止めないか?俺だってタメ口だし…」
二人は向かい合って椅子に座り、やがてルークがふと困ったように眉尻を下げてそう切り出す。
そうすれば、ハッとしたギンジはとんでもないとばかりにぶんぶんと首を振りながら口を開いた。
「ルークさんはおいらの命の恩人の一人なんです!それは出来ませんよ」
「お、大袈裟だって」
「いえ…あの時おいらに真っ先に手を差し延べてくれたルークさんは、今でもおいらにはヒーローと同じなんですよ?」
「ギンジ…」
かつて、アルビオールの飛行実験でメジオラ高原に墜落した時、命の危機であった操縦士のギンジを助けたのが、偶然にも飛晃艇を求めてこの街に来たルーク達だった。
ギンジは臆面もなくそう語って聞かせ、ルークはどこか気恥ずかしそうに頬を掻き、苦笑を浮かべながらギンジを見やる。
「でも、なんでギンジはアッシュのパイロットを引き受けたんだ?…またあの時みたいな危険な目にあうかもしれないのに…空が好きだからか?」
そして、何気なくルークが気になったことを問いかけてみれば、ギンジは否定するようにゆっくりとかぶりを振った。
ぱちぱちと瞬きしながら違うの?と、不思議そうに小首を傾げるルークを真っ直ぐに見つめて。
「確かに、空を飛ぶのが好きってこともありますけど…やっぱり、一番はルークさんに会える機会が増えるからです。それにルークさん達のお力になれて一石二鳥ですし」
「…へ、それは…」
「なんたって、おいらはあの時からルークさんのこと大好きですからね」
「……なっ」
ギンジはにっこりと満面の笑顔で告白をするようにそう告げ、完全に言葉を失ったルークはかぁっと耳まで赤く染める。
そんなルークを見ていたギンジもまた、ガシガシと照れたように頭を掻きながら、はにかんだ笑みを浮かべたのだった。
理由を教えてあげる
(おいらの気持ち、少しは伝わりましたか?)
end
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主催企画、第三回聖焔祭の提出作品「り」になります。
これまたギンルク初挑戦(笑)
私的に、ギンジはさり気なーく恥ずかしいことを言ってくれるようなイメージがあります。
そんでもって、その後二人とも顔真っ赤にして恥ずかしがっていればいいさ!(投げた…!)
2008.12.17 千鳥薙 拝