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□あんたは肝心なところで鈍いから
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どうしようもない、なんてずーっとむかしから知ってた。


それでも、愛しくてしかたなかったんだ。

















「なぁなぁ皆本ー合コンしよーぜ合コン」


「行くわけないだろ、」


「お前がいないと来てくれねーんだよー」


「知るかっ」














晴天の空のもと。
本部の中の、ESP専用の検査室で。


わたしたちの存在にまったく気付いていないふたりは相変わらず女の人のはなしをしていて。
(あ、べつに皆本さんはしてないか、)






隣りで、薫ちゃんがヤキモチ妬いたのを、静かに感じる。
子供らしいそれに、小さく笑みを溢して。



















「皆本さん浮気しちゃだめだよー?」


「っ、なんだ、いつの間に来てたんだ、四人とも、」


「そんなん、うちのテレポートに決まってるやろ」


「リミッター外してるの、忘れちゃったの?皆本さん」
















振り向いた皆本さん。
それと同時に飛び付いてくのはわたし以外の三人で。


わたしは、あの子たちほどまっすぐにはなれない。
けど、相変わらず年齢だけはまだまだ子供の範囲で。
いろいろなせかいを、いろいろなものを。
嫌というほど見せられて、今更自分の気持ちに素直になれる勇気は、わたしにはない。















『今日の合コンは誰となの?』


『っ、なんだよ、またからかいてぇのか?』


『違うよー?ただ毎回飽きないなーとおもって』















ぎゃあぎゃあ騒ぐ三人プラス皆本さんを横目に、賢木先生に意識を飛ばす。


周りには聞こえない声だけど、賢木先生だけにはちゃんと届いてて。
















『ガキが、大人ぶるなって』


『残念ながらガキのままじゃいられなかったのー』


『俺からしたらおまえはまだまだガキだ』


『そーかなー』


『まだ男も知らないくせして』


『え?わたし皆本さんと、』


「っ、まじか!」















他愛ない会話。
それさえ愛しく思うのに、口からついてでるのはからかうような口振りばかりで。


静かに口許を上げて言葉を紡げば、口に出してしまう愛しいひと。















「なんだよいきなり大声出して、」


「い、いや?」


















にっこり。
今度は、なんの色も含まず笑ってみせる。


知ってたんだ。
わたしに向けてくれる瞳が、妹を見るような瞳だったこと。


わたしを、決して女としてみてはくれないことくらい。
































あんたは肝心なところで鈍いから
(だいすき、あいしてるよって、)
(いっそのこと読み取ってくれればいいのに、)





















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