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□なんで赤くなるんだ?
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「あしゅらー」


「………、」


「あしゅらおーい」


「………、」


「あしゅらやーい」


「……やーいとはなんだ、」


「あ、やっと返事した!」










くらーいそこが、わたしの、わたしたちの居場所。













「あしゅら返事してくれないからー」


「……何か用なのか?」


「かまって!」


「……却下」


「なんでー!」


「……この会話少し前にもしたぞ」


「……あしゅらがかまってくれないからわるいんじゃん、」













ふよふよ、ふよふよ。
わたしと阿修羅の間には、一定の距離。


その距離を作ってるのは紛れもなく阿修羅が身に纏ってる布で。


いつだってその距離のまま。
(前に一度手をのばしてみたらはたかれた、!)















「……つまんない、」


「勝手について来たのはお前だろう」


「それは、……そうだけど」


「つまらないなら帰ればいい」


「っ、やだ!あしゅらと居たいんだもん!」
















死神さまの元から逃げ出したのは、もうずっと前のはなし。
わたしはたしかに勝手について来ただけだけど。


ほんの少しの期待。
傍に置いていてくれてるのは阿修羅自身なんだって、伝えたら追い出されてしまうだろうか。
(これ以上なにも望まない、望まないから傍にいさせて、)

















「……お前もしつこいな」


「だってね、あしゅらが大好きだから」


「………、」















にっこり、笑う。
返事なんて望んでない。
ただここにいられればもう、十分しあわせだから。



















「あしゅら、だーいすき」














ふよふよ、ふよふよ。


阿修羅を囲う手みたいなそれに手をのばす。


また、はたかれちゃうかな。
それでもいい、それだって阿修羅との関わりになるのなら。






















「っ、!」


「懲りない奴だ、」












一瞬の出来事。


触れようとのばした手は、逆にその布に捕らえられ。
少しの背中の衝撃とともに目に映ったのはいつもより断然近い、阿修羅の姿。



















「っ、な、」


「どうしたら黙るんだろうな、お前は」





















背中は、固い床の感触。


それでも包まれたのは愛しいそのぬくもりで。

























なんで赤くなるんだ?
(ばかばか、)
(この天然鈍感阿修羅め、!)












お題拝借『確かに恋だった』


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