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□それはね、
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「ねえ、どうしていつもこーするの?」
「…………内緒、」
ベットの上で、ゴロゴロ寛ぐのはいつものことで。
その隣に、拓麻がいるのも、日常で。
いつから、なんて忘れちゃった。
けど、理由は今まで、聞かないでいて。
私の隣でニコニコ微笑んでいる拓麻は、いつだって私の髪に触れるのだ、それはもう、飽きないのかと言うくらい。
「内緒って、なんで?」
「嫌?」
「いやじゃないけど、」
根本から、毛先に向けて指を通したり。
毛束を、指に絡めたり。
拓麻はいつだって、その綺麗な指を髪に絡めて。
嫌、なわけじゃないし、むしろ心地よいのだから今まで何も言わなかったのだけど、ふと気になったのだ、何故執拗に髪に触れるのか、と。
「気に、なる」
「今更だね」
「だって、」
時折、首筋や耳元に触れる、拓麻の指。
心地よくて、ぴくん、と体が跳ねる。
相変わらず拓麻は笑っていて、それでも理由は教えてくれないのだけど。
「だって気になる」
「そう?」
「ねえ教えてよ」
「んー、二割は気持ちいいから、かな」
「二割、?」
さらり、と、前髪に触れる拓麻。
優しいその笑顔はいつだって、絶えることがなくて。
私はその笑顔が好きだった。
ヴァンパイアらしくない、その笑顔が。
「残りの八割は、教えてあげない」
「どーして、?」
「言ったらすねちゃいそうだから」
「…………なにそれ、」
ゆっくりと、絡めとられる髪。
耳を掠めた指に、また体を奮わすけど何より、拓麻の言葉が気になって。
まっすぐ拓麻を見つめるけど、それは拓麻の手によって遮られて。
「そんなに見ちゃ、だめ」
「なんで、?ねえ手退けてよ見えない、」
「今日はやけに聞きたがりだね」
「………拓麻がわるい、」
「隠すから?」
「……わかってて言うの、かなめそっくり」
「はは、それ枢が聞いたら怒るよ?」
髪に触れる、反対の手で目を覆われた。
今日の拓麻はいつになく変だ、私が聞いたことがそんなに悪いことだったのか。
怒ってるかんじはしないけど、その行動は意味深で。
「教えてもいいけど、すねちゃダメだよ?」
「っ、!」
瞬間。
紡がれたのは嬉しい言葉。
だったけど、唇に触れた温もりは、まったく予期していないもので。
それはね、
(「こうしてるときみがすごく気持ちよさそうな顔するから、それが見たくて」)
(「っ、」)
(「すごく、かわいいよ」)
(だからこれからもきみに触れさせて、)
(その顔を、僕だけに見せて、)