00部屋参
□長いお別れ
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「俺はおまえを信じてきた、シャフト」
グラハムさんが、前髪で顔を隠しながら言った。
「お前は俺の舎弟だった。それは確かだ」
そう、俺は――シャフトはグラハムさんの舎弟だった。でも、ただの舎弟じゃなかった。
「お前が普通じゃないことには気付いていた。でも俺はそれを無視した。何故か? 俺の舎弟が何者であろうと、俺の舎弟であることに変わりはないと思ったからだ」
「……グラハムさん」
「けれど、お前はそれ裏切った」
俺を睨むグラハムさんの青い目は、びっくりするほどに底冷えしていた。
「もう、お前は俺の舎弟じゃない」
痛いほど、身に刺さる言葉。けれど、俺は動じないふりをして言い返した。
「分かってますよ、グラハムさん。俺はそれを承知の上でしたんです。貴方は俺を舎弟だと思っていたかもしれないけど、俺がそう思ったことなんて一度もなかった。俺は貴方を利用していただけなんです。だからそんなこと言わないでください、気持ち悪い」
言うたびに、ぐさぐさと体に穴が空いていく。本当はこんなこと言いたくない。でも、言わなければならないのだ。
「さよなら」
痛みを堪えて懸命に言うと、グラハムさんは薄い笑みを浮かべて答えた。
「ああ、さよならだ」
青い作業着に包まれた背中が、どんどんと遠ざかっていく。もう俺は、あの背中に触れることはできない。
涙が流れた。
吐き気がする。
「はは……」
座り込んで、俺は喉を掴んだ。
「グラハムさん、」
もう終わりだ。何もかも終わってしまった。もう俺は、グラハムさんの隣に立つことはできない。その背を見ることすら、叶わない。
「さよなら」
呟いて、俺は泣いた。
本当は、こんな終わり方望んじゃいなかった。
シリアスに。タイトルの元となった小説は未読。