00部屋参

□愛しい君にハッピー・バースデー!
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 今日は5月4日。
 つまり、俺のハッピー・バースデー。
 だけどそれには関係なく、俺は仕事三昧だった。
 情報屋の仕事に誕生日なんて関係ない。誕生日を祝いに駆けつけてくれた子たちからは、ありがたく短時間でプレゼントを受け取った。
 しかし困惑したのは、それ以上に池袋のみんなからの反応だった。
 まず、帝人くん。彼からは、日付が変わると同時にバースデーメールが来た。それから、今度気になる店があるから食べに行こうとのお誘い。杏里ちゃんを誘えばいいのにと思う反面、その予行演習かなとも思ったのでOKしておいた。面白いことになりそうだ。
 それからすこし遅れて、沙綺からのメール。嫌々ながらだろうが、「正臣も照れてるだけでお祝いしていました」と書かれていた。彼女は、良い子だ。
 それから妹たちによる誕生日プレゼント(郵送)。中には女装セットと媚薬。即廃棄させてもらった。
 そして、出勤してきた波江からのケーキ(手作り)、御影ちゃんからの「今度面貸せ」メール(写楽さんからかと思った)、仕事で会った四木さんからなんと意外なるお祝いの言葉と赤林さんからスーツのプレゼント(サイズがぴったりでちょっとビビった)、セルティのバイクに相乗りした新羅がわざわざ応急処置セットをくれて、まあ日中はそんな感じ。
 そして、夕方。
 さすがの池袋最強もゴールデンウイークで休んでるだろうと思っていたら、甘かった。
「いーざーやーくーーん」
 ぶっ飛んできたのは電信柱、危うく避ければそこにはシズちゃん+幽くん。弟の前で殺人未遂を犯すとは、さすがシズちゃんだ。
「今日ばかりは見逃してくれないかなあ、シズちゃん」
「あァ? なんで見逃さなきゃならねぇんだよ」
「何故ってそれは、今日が俺の誕生日だからだよ! まあ、シズちゃんは知らないだろうけどさ」
 俺の言葉に、案の定知らなかったらしいシズちゃんはあんぐり口を開けて、それから、
「忘れてた……!」
 と叫んで自販機を取り落とした。ミシッとコンクリートが凹む。
「テメェ臨也、なんで言わねぇんだよ!」
「君に言う義理なんてないだろ?」
「クソ、知ってれば……!」
「知ってれば、自販機の一振りでもプレゼントしてくれたのかい?」
 皮肉たっぷりに俺が言うと、シズちゃんはもごもごと口を動かして訳の分からないことを言った。何て言ったのかはさっぱり分からない。
 でも、今のうちに逃げるのが勝ちのようだ。
「じゃあねシズちゃん、俺はこれから用事だからさ!」
「あっ、テメコラ待て臨也!」
 駆け出した俺の顔の横を、自販機がぶっ飛んでいく。怖い怖い。
 逃げて行った俺は、その後その場でこんな会話がなされていたことは知らず終いだった。
「……渡し損ねたな、臨也さんへのプレゼント」
「!? 幽、お前知ってたのか!?」
「うん。兄さんもてっきり知ってると思ってたよ」
「……忘れてたんだよ、年に一回なのに」
「俺、後で臨也さんの家まで渡しに行くから、兄さんも来る?」
「お、おう」
「じゃあ、今から買いに行こうか」

 待ち合わせの場所に着いた俺は、そこで待っていた相手に手を振った。
「おーい、ドタチン! 待たせてごめんね!」
 すると、ガードレールにもたれていたドタチンはこちらを向いて、少し、笑う。
「静雄と喧嘩してたんだろ?」
「あっちが一方的に喧嘩を売ってきただけだよ。……それより、楽しみだな、狩沢さんの料理」
「気合いを入れて作ってたぞ、その……すごいのを」
「痛メシかな?」
「コメントは差し控える」
「はは、遊馬崎くんのアイスアートも楽しみだなあ」
 さて、今からはパーティーの時間だ。
 君も祝ってくれよ?
 俺の、愉快な誕生日を!






○年ぶりの総受けでした(笑)
臨也さんハッピーバースデー!

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