00部屋参

□ポッキーゲーム!
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 11月11日。
 ポッキー&プリッツの日である。
 26世紀にポッキーがあるのかなんて突っ込まないでほしい。何はともあれ、ポッキー&プリッツの日なのだ。




 その日、慶次はそわそわしていた。手にはポッキーの箱を持ち。
 堅物の彼でも、中学時代にクラスメートたちが散々騒いでいたから、今日がポッキー&プリッツの日だということは知っていた。そして、ポッキーと言えばポッキーゲームだということは、先ほど燈から聞いた。手に持っているポッキーは、先ほど基地内のコンビニで買ったものだ。
 ポッキーの箱を手に彼がうろうろしているのは、艦長である小吉の部屋の前である。実は先ほど部屋の中を覗いてみたのだが、生憎の留守であった。今は彼の帰りを待っているところだ。
 目的は一つ。
(ポッキーゲーム……とか、艦長してくれるかなあ)
 艦長としての業務が忙しい彼がこんな遊びに付き合ってくれるのか、そもそも男同士でポッキーゲームってどうなのか。様々な考えが過ぎるが、しかし慶次と小吉は一応恋人同士である。まだ付き合って日が浅くベッドも共にしていないとは言え、恋人同士である。
(付き合う前ならともかく……今なら……!)
 ポッキーを折ってしまわないように気をつけながら、ぎゅっと手を握る慶次。
 と、
「おう、慶次、どうした」
 向こうから歩いてきた小吉が、慶次に気付いて片手を挙げた。
「そんなところでどうした?」
「いや……艦長に……」
「俺に何か用か?」
 まあ入れ、と小吉に促されて、慶次は小吉の執務室に入る。そして、首を傾げている小吉に、ポッキーの箱を差し出した。
「艦長、これ」
「ポッキー……? くれるのか?」
「はい。今日はポッキーの日らしくて……」
「ああ、そう言えば学生の頃騒いでたな。そうか、今でも言うんだなあ」
 慶次からポッキーの箱を受け取った小吉は、パッケージを開け、中からポッキーを取り出す。そして、一本口にくわえ、
「……ん」
 慶次に手招きした。
「……?艦長?」
「ポッキーと言えば、ポッキーゲームだろ?」
 楽しげな顔をした小吉が、ポッキーを片手で支えて悪戯気に笑う。
「慶次、しようぜ、ポッキーゲーム」
「……っ」
 年上の恋人に誘惑するかのように誘われて、慶次の理性も限界に達した。小吉の顔をじっと見つめながら、勢いよく、ポッキーにかじり付く。
 ポキッ
 軽い音が、室内に響いた
「……え?」
 慶次がポッキーに目を遣ると、彼がかじり付いたところで、ポッキーが真っ二つに折れている。どうやら、歯に力を込めすぎてしまったらしい。
 そんなことってありか。
 慶次が呆然としていると、小吉がニシシと笑った。
「俺の勝ちだな、慶次。さーて、何をしてもらおうかなあ」
 まるでこの展開が見えていたかのように、余裕の素振りの小吉。子ども扱いされていると言うか、相手にされていないと言うか。
 我に返った慶次の頭の、別の部分のスイッチが入った。
「よし、じゃあちょっと高いけどコンビニでフランの……」
 言いかけた小吉までのポッキー一本分の距離をボクサーならではの速さで詰めると、目の前の唇に、思い切りかじり付いた。
「!?」
 予想外部の展開に目を白黒させる小吉に、一瞬の後に唇を離した慶次は、にっこりと笑いかけた。
「ごちそうさまです、艦長」
「慶次、おまっ……」
「年下だと油断してたら痛い目見ますよ?」
 俺も24の、男ですから。そう言ってにっこり笑いかけ、慶次は再度、キスを仕掛けた。

(なんだ)
(ポッキーなんか使わなくても、簡単に、できたじゃないか)
(艦長の口、ポッキーの味がするなあ)




たまには行事ネタでラブラブな慶小。
途中まではツイッターでこうなるはず!ってネタだけ書いたんですが、物足りないので慶次くんに逆襲してもらいました。
日付変わるギリギリ、間に合って良かった!

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