00部屋参

□その白い肌が灰になるまでね
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「抵抗がないのは、それはそれでつまらんな」
 蘭丸の処女雪の肌に手を滑らせながら天魔王が言うと、蘭丸は整った顔を顰めた。
「抵抗しろと?」
「する気はないのか?」
「ない」
 きっぱり言い切った蘭丸は、畳の上に潔く身を投げ出している。その胸の上を天魔王の黒く塗った爪が這い、気まぐれに傷付けていく。蘭丸は抵抗しない。ただ他人事のように、自らを天魔王が犯すのを眺めている。
「こういったことは久方ぶりだろうに。お前のことだ、無界の女に手を出したこともなかったのだろう?」
「特に興味が湧かなくてな」
「お前に焦がれるあの太夫、何て言ったか、あの女が気の毒だ」
「思ってもいないことを」
 天魔王と蘭丸の視線が交わる。蘭丸の喉を引っ掻いた天魔王は、相手の深い昏い目を覗き込んで問うた。
「何故俺に体を許す?」
「お前が『天魔王』だからだ」
「お前は『天魔王』だと認めた相手には、誰にでも体を許すのか?」
「私が『天魔王』だと認めるのは、あの方とお前だけだ」
「水掛け論だな。……では、何故『天魔王』には体を許す?」
「……代償だ」
「代償?」
「私が『天魔王』に望むのは、私の、亡霊の棄てたはずの夢を叶えること。体を許すのは、その代償に過ぎない」
「……成程」
 くつくつと笑って、天魔王は蘭丸の首筋に顔を近付けた。先程爪で掻いた場所に口付けたかと思うと、そのまま、がぶりと牙を立てる。
「っ」
 息を詰めた蘭丸に、天魔王は満足げな表情を浮かべた。
「俺がお前の望む『天魔王』である限りは、俺にその身を捧げる、か。いいだろう」

「ならば永遠に俺の傍にいるのだな」

「その美しく白い肌が、灰になるその時まで」








小説自体を久々に書いたので違和感ばりばり。
お題はいつものようにjoy様より。

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