00部屋参

□孕んだふりして子宮はわらう
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※ぬるいというか淡々としていますが割とがっつり性描写があります。注意してください。





 更木の初めての女は、卯ノ花だった。
 初めて出逢った日から強烈に憧れて、護廷十三隊に入隊して十一番隊隊長になって再会して、そして再会の喜びのまま、押しかけた彼女の部屋で抱いたのだ。
 それ以来、更木は卯ノ花以外と肌を重ねたことはない。
 簡単な理由だ。更木の力は強すぎる。そこらの女など、触れただけで壊してしまうのだ。別に他人の命に執着する更木ではないが、そうしては折角手に入れた隊長の座を奪われてしまう可能性がある。
 否、理由はもっと簡単だった。
 ただ単に、卯ノ花以外を抱きたいと思わなかっただけ。
 それに対して卯ノ花がどう思っているのかは分からない。抵抗されたらされたでいい、無理矢理抱くまでだと更木は思っていたが、今のところ、彼女は抵抗もせずに更木に抱かれていた。もしかしたら他の人間に被害が及ばないようにしているのかもしれないし、あるいは、自分以外を抱くことのできない更木に同情しているのかもしれない。だが、そんなこと、更木はどうでもよかった。




 そして今日も、更木は卯ノ花を抱く。
「卯ノ花、」
 名を呼んで唇を重ね、荒々しく舌を捻じ込む。ぽってりとした唇を食いつかさんばかりの勢いで荒らしていく。本能的に息継ぎはするが、やむことのない接吻は、まるで嵐のように続いた。
 骨ばった手を動かして袂の間から滑り込ませ、肉付きのよい体を暴いていく。しっとりとした肌は汗一つかかず、手に吸い付くようだ。
「オイ、何か言えよ」
 卯ノ花は何も言わない。喘ぎ声一つあげない。
 冷めた目で更木を見下ろし、自分を荒らしていく男に、何の関心もないかのように見える。
「卯ノ花、」
 更木は彼女を名で呼ばない。烈という名は仮初のものだ。更木が呼びたい名ではない。
 では、八千流、と。
 その名でも、今のところ、呼べていない。
 何故だかは分からない。だが、自分にまるで心を許さない卯ノ花を見ていると、その名で呼べないのだ。
 彼らしくもない、躊躇い。
 帯を引き裂き、乱暴に着物の合わせ目を開く。急に温かい体を全身で感じたくなって、更木は卯ノ花の体を抱き寄せた。冷たく見える彼女の体は、しかし、ちゃんと温もりを持っていて、柄にもなく、更木はそのことに安堵する。
 しばらくそのまま抱き締めていると、珍しく、卯ノ花が口を開いた。
「なんですか、貴方らしくない。ままごとのつもりですか」
 今の更木の普通の人間のような態度を、普段の乱暴さと比べて皮肉っているらしい。更木は言い返す。
「何だよ、別に俺の勝手だろ。……それとも、優しく扱われるのは、嫌いか?」
「どちらかと言えば、好きではありませんね」
 冷笑して言って、伸ばした手で、卯ノ花は更木の髪を掴んで顔を持ち上げた。
「優しいだけの生温い世界など、私好みではありませんから」
 その言葉に、ああ、と更木は思う。卯ノ花以外を抱いたことのない更木とは違い、卯ノ花は何人もの男を知っているのだろう。そしてその誰もと、このような、乱暴な関係を築いてきたに違いない。
 更木が優しく人に触れられないなら、卯ノ花も同じ。
 二人はともに剣八なのだから。




 抱え上げた脚を肩に乗せて、更木は、卯ノ花の体を揺すぶる。さすがの卯ノ花も、少し、息を荒くする。それに調子をよくして、更木は、思い切り突き上げた。
 孕めばいい、と。
 孕めばいいと、思う。
 何故ならきっと、それだけは、彼女を動かすことができるだろうから。
 自分が父親になれるとも思えない。卯ノ花に子を産んでほしいとも思わない。
 だけど、孕めばいい。
 孕んで、確かに更木が彼女を抱いているということを、感じればいいのだ。
 だって、これじゃあ、更木だけが焦がれているかのようで、不公平だ。
「卯ノ花、」
 優しく抱けばいいのかもしれない。彼女が今までそうされたことがないように。だけどそれは、更木にはできない、から。
「果てるぞ」
 高みに昇り詰めて、彼女の中に、全ての熱を流し込む。卯ノ花の背が弓形に反れた。声にならない声を上げて、卯ノ花の手が、宙を掻く。
 その手を、反射的に、握り締めた。
 卯ノ花の目が、驚いたように更木を見る。更木はにやりと笑いかけて、反対の肩に彼女の脚を担ぎなおした。
「まだまだ終わりじゃねぇぞ」 
 何度も何度も、夜毎に、更木は卯ノ花を抱く。
 理由はとっくに気付いている。
 彼は、彼女を、



 ―――――――――××、なのだ。









と言うわけで本編の情熱のまま書いた剣卯。まさか公式とは思わなかったのでひゃっほいしております。
しばらく剣卯が続くと思われますのでよろしくお願いします。
タイトルは「夜と魚」様より。

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