00部屋参

□僕と君との微妙な関係
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「ナッちゃん、美術5だったよね」
 唐突に言い出した利家に、成政は「何だよ」と眉を寄せた。
「そのネタやけに引っ張るな」
「だって、ナッちゃんが美術5って本当に意外で。で、実技は彫刻だったんだっけ」
「そう。森の眉間彫れってか?」
「違うよ、その話じゃない。5取った作品って、どんなのだったの?」
 訊かれて、ぐうと、成政は返答に窮した。利家が首を傾げる。
「秘密?」
「別に、言えねぇ話じゃねぇけどよぉ……」
「??」
「あいつ」
 言葉少なに、成政は指先を少し離れたところで佐久間と喋っている不破に向ける。
「偶然班が一緒で、ペアだったんだよ」
「へえ、そうだったんだ」
 すると、二人が自分の方を見ていることに気付いた不破が、「なに?」と首を傾げて、こちらに歩いてきた。
「何々、どしたの」
 尋ねる不破に、利家が満面の笑みで言う。
「ナッちゃんの美術が5だったときの作品の話」
「あー、あれかあ」
 思い出すような顔をしてから、不破は小さく顔を顰めた。
「でも私、あの作品あんまり気に入っていないんだよね」
「そうなの? どうして」
「なんか、綺麗過ぎて」
「綺麗に彫ってもらって嬉しくないの?」
「嬉しくないって言うか……綺麗過ぎて、自分じゃない気がするんだよね」
「ああ、成程」
 ぽん、と利家は手を叩いた。
「どっちかって言うと可愛い系だもんね、ミッちゃんは」
「そこで森君みたいに『女性としての魅力に欠ける』と言わないでくれてありがとねー」
「あっ、あれ気にしてるんだ」
「するよそりゃ、女だもん」
 森君赦すまじ、と大真面目な顔で言う不破に、利家がぷっと噴き出す。それから、「でも」と成政を見た。
「ナッちゃんがミッちゃんを綺麗に彫ったってことは、ナッちゃんの目にはミッちゃんがそう見えてるってことじゃないかなあ」
「えっ?」
 誰も予想しなかった利家の言葉に、不破が目を真ん丸に見開く。対照的に、成政は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「いい加減なこと言うんじゃねぇよ、トシ」
「あれ、僕の推量は外れたかな?」
「もともと本気で言ってねぇだろ」
「まあね。でもそういう考えもあるよねー、まっちゃん」
『ねー』
 肩の上の妻と顔を見合わせて、利家はにっこりと笑う。その隣では、成政の言葉を聞いた不破が、暗い顔でため息をついた。
「ってことはやっぱり、佐々も私には女としての魅力がないと思う?」
「ハァ?」
 なんでそうなる。ツッコミたくなった成政だが、グッと我慢する。こういうときの女を相手にするのは、なかなか厄介だ。
 言葉を選んで、成政はぶっきらぼうに言った。
「別に、お前はお前が思ってるほど、女としての魅力がないわけじゃねぇよ」
「え?」
「お前の部下でお前のことアホみたいに愛でてるヤツ、いっぱいいるからな」
「……そうなの?」
「お前の前で見せねぇだけだ」
 だからその嫉妬の先がこちらに来る、と続く言葉を飲み込んで、成政は落ち込む不破の肩を叩いた。
「そう悩むな。お前には女としての魅力もちゃんとあるし、他の魅力だってあるんだからな」
 一気に言ってしまってから、柄にもなく恥ずかしくなる。今この場に勝家がいなくて本当に良かった、と心の底から成政は思った。いたら今後一か月はネタにされたに違いない。
「くだらないこと言ってねぇで、行くぞ。今回の戦いの報告だ」
「そうだね、行こうか」
「……うん」
 気持ちを切り替えて、三人は並ぶ。そして、それぞれの胸の内を抱えながら、静かに歩き出した。








と言うわけで書いてみました成政×不破!書いてて超楽しかった!また今度は勝家と御市様とかも絡めたいなあ。

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