00部屋参

□あまいホットショコラのようなぼくたちの秘密
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「狩沢さん、ホットショコラ、できましたよ」
 ソファに背をもたれかけさせて毛布をかぶってテレビを見ていると、そう言いながらゆまっちが私の隣に座った。
「どうぞ」
「ありがとー」
 ことん、と私専用のマグカップが私の前に置かれる。私は礼を言って、ゆまっちを毛布の中に招き入れた。
「春になっても、布団からは離れられないっすよねえ」
 自分の分のマグカップを机に置いたゆまっちが、そう言いながら寄り添ってくる。私も逆らわず、ぴたりと彼とくっついた。
 テレビの中では、私たちがいつも見ているアニメとは違う、バラエティ番組をやっている。今は息抜き中なのだ。アニメだと真剣に見てしまって息抜きにならないから、息抜きしたいときは、別のものを見るようにしている。
 バラエティ番組は、特に面白いわけではない。でも不思議と目が離せない。などと考えながら、私は隣のゆまっちの肩にもたれかかった。
「ゆまっちー」
「んー、何ですか?」
「何でもない」
「何ですか、それ」
 私の言葉に笑いながら、ゆまっちの手が私の腰を抱き寄せる。いやらいい感じじゃない、優しい感じで。それが嬉しくて、私は彼の左手を握った。
 私とゆまっちは、付き合っている。恋人同士だ。
 でも、そのことを知る者は、私たち以外にはいない。渡草っちとドタチンにも知らせていない。
 別に、後ろ暗いと思っているわけではない。ただ、今までの関係を壊したくないのだ。ワゴンの中に恋愛を持ち込んだら、きっと、どこからか関係がおかしくなって、破綻してしまう。それが分かっているから、私とゆまっちは、家の外ではラブラブしないようにしているのだ。
 まあ、恥ずかしいのもあるけどね。
「美味しいね、ホットショコラ」
 空いた方の手でマグカップを持ち上げて、私はホットショコラに口をつける。すると、ゆまっちが身を乗り出してきた。重なる唇。
「本当だ。美味しいっすね」
 離れたゆまっちがそう言って笑うから、私は恥ずかしいと同時に幸せになって、ぽかりとゆまっちの頭を殴った。
「バカ、ゆまっち」



 この関係は秘密。この恋愛は秘密。
 まるでホットショコラのような、あまいあまい、私たちの秘密だ。









5周年企画のみけさんリクエスト、「遊馬狩で甘い話」でした。
最近全然甘い話を書いていないどうしようと思いながら書いたら、バカップル遊馬狩になりました(笑)
お題は言葬様よりお借りしました。

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