その七

□幽霊だとか心霊だとか
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「七不思議、か」
「七不思議、だぜ」
「七つ全部知ったら死んじゃうんだってー」
「じゃあ、誰がどの不思議を知っているかを口には出せないな。七つ揃ったら困るから」
「うん」
「にしてもこれ、誰が言い出したんだっけ?」
「玲じゃないのか?」
「違うぜ」
「誰でもいいじゃん。じゃ、行こっか」
「行くのか?」
「行くよ」



「七不思議ツアー」










 最近の高校には、夜の警備員も防犯設備もないのだろうか。
 そんなまっとうな疑問を胸に抱きながら、四人の男子高校生たちは自分たちの高校のグラウンドに立っていた。
 時刻は夜十時。部活で残っていた生徒たちも帰り、残業していた教師たちも帰り、全く敷地内には人気がない。
 暗い校舎を見ていた五葉が、ため息をつきながら言った。

「一人一つ、懐中電灯はあるな?」
「持ってきた」
「あるよー」
「オレは携帯があるから問題なし」

 今から四人は、夜の校舎内に乗り込みに行くところである。
 忘れ物を取りに行くのでも何でもない。ただの七不思議ツアーだ。
 学校の怪談。学校の七不思議。多くが廃れてしまったはずのそれが、何故か四人の通う高校には存在している。しかも、旧制中学校だった頃から今まで伝わるという、わりと古いものが。
 それを実際に見に行こうと言い出したのは、一体誰だったのか。
 とにかく七不思議ツアーをすることが決まってしまったのだ。
 そして彼らは、ある少年を待っていた。

「にしてもミナ、遅いな」
「みーは大体いつも遅いよ?」
「時間にルーズな奴だからな……」

 携帯で時間を確かめながら、紫音が呟く。
と、開いていた校門からダッシュで駆け込んでくる人影があった。

「遅れてごめん!」
「おせーよ」
「あと十分来なかったら、怖くて来れないのかメールを送って確かめようとしてたところだよ」
「うっ……ご、ごめん。ていうか怖くはないよ!」
「みー、校舎見ようとしないよねー」

 山崎 皆乃。
 四人とは現在は違うクラスだが、一年生の頃にクラスが同じだったため、仲が良い。その頃は五人組に近かったと言っても良いほどの存在である。
 彼もこの七不思議ツアーに参加する……というか、かなり強引に巻き込まれたのだった。
 元々乗り気でなかったせいか、決して暗い校舎を見ようとはしていない。

「ミナが一番怖がりだったよな、そう言えば」
「分かってるんなら誘わなければ良いのに……」
「人が怖がっている方が落ち着くんだよ」
「ごよー、それ最低」

 集まった五人。
 先頭には正斗、その後ろに玲と皆乃。そしてしんがりに紫音と五葉という態勢で、五人は校舎内へと足を踏み入れた。








「人が来た……のか?」

 暗闇の中。
 一人の少年が、そう呟いて顔を上げた。
 夏服の男子制服に、袖から伸びる色の白い腕。特にすることもなく座っていた彼は、自分の目の前に置いてある鏡を見ながら、目を細める。

「……七不思議ツアー、か」

 気楽なものだ。
 立ち上がり、彼はそっと歩き出した。

「七不思議は七つを知ってはいけないのに」

 その周囲を、まるで牽制するかのように、赤い人魂がまとわりつく。鬱陶しげにそれを見やりながら、彼は独り、暗闇に溶けていった。










「七不思議を全部知ったら、死んでしまうんだから」





























――アトガキ
もう夏も終わるというのに始めたぐだぐだホラー感漂う怖い話もの。
なんで何話もあるんだよというツッコミはなしの方向です。
そして時亜がマトモなホラーを書くとか、マトモな青春を書くとか、そういう期待もなしです。
新キャラ……出ましたね。
こいつはモデルありで、本人の了解も取っています。というか、名前と外見は本人作です。
アカネがモデルです。むしろこいつが今まで出ていなかったことがびっくりなくらい、青林檎メンバーとは仲良しさんです。
 モデルなしは、スポーツメン・空のみ。
続く……ですよ。
夏が終わってからも続きますよ。
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