その七

□君らと僕と昼休み
1ページ/1ページ









 自己紹介が必要だと思う。
 読者のみなさん(作者四人組以外)の方は初めまして、陸上部所属にして四人のクラスメート、戸田 空だ。
 今日は 某人間の気まぐれで、俺が語り手を行うことになった。









「じゃ、せーのでカード開くよ。せーの、」
「あー、しーちゃんはワンペアか」
「正斗はストレートだな。惜しい、後一枚でストレートフラッシュだったのに」
「えー、なんでれーはフラッシュなのさー」
「偶然偶然。つーか五葉がフルハウスとかおかしい。イカサマしただろ」
「してないよ、どころかカードにも触れてないし……。それ以前に俺だとおかしいって何だ。説明しろ、玲」


 現在は昼休み。そして、何故か俺の席の真後ろで、成田たち四人はトランプをしている。
 今やっているのはポーカー。その前は大富豪。
 気になってきた俺は、思わず振り向いて机の上の様子を見た。俺の後ろの席は、成田の席だ。
 カードから視線を上げていくと、頬杖をついている成田と目が合う。片方の手を顎から離したヤツは、二コリと微笑んで口を開いた。


「戸田もやるか?」


 その言葉に、残りの三人もこちらを見る。あー、視線が集中するのは苦手だ。特にこのメンバーとなると、尚更。全員が全員整った顔をしているからか、理由もなく引け目を感じる。劣等感、というヤツだろうか。
 まあ、勿論本人たち四人は、そんなのちっとも気付いちゃいないだろうけど。


「そらもやる?」


 何の躊躇いもなくニコニコと言ったのは片岡。口の周りにはパウンドケーキの欠片が付いている。ほんのりアルコールの匂いがするのは、ラムレーズンでも入っていたのだろうか。


「俺も構わないが……どうする?」


 同じように音無も言う。コイツは断れない性格だからな、うん。
 で、この三人の反応がそうであれば、当然井浦も駄目とは言わない。……かと言って、特に何も言わなかったけど。俺と井浦は、あまり仲が良くないのだ。
 いや、井浦だけじゃない。俺とこの四人とは、それほど仲が良いわけじゃない。
 まあ、成田に関してだけは、他のクラスメイト達よりは仲が良いと自負しているけど。その割に名字呼びなのは、まあ、あれだ。きっかけがないから。
 どうする?と成田が首を傾げる。女子が見れば騒ぐだろうが、コイツの仕草は女子っぽかったり男子っぽかったりと中途半端だ。


「いや、俺は見てる。成田が不正をしないか、な」
「戸田までそれを言うか。だからやってないって言うのに……」


 俺の発言が気に入らなかったのか、成田は眉をしかめて不機嫌を表現して見せた。表情に出ているうちは大丈夫だ、と最近分かった。椅子を動かした俺は、成田の隣へと移る。
 五枚のトランプを手にする四人。表情に出やすいのは片岡。だけど、ポーカーは運だ。最初の手札がどうかということは、然程関係がない。
 俺もまじまじと成田の手札を覗き込む。ウザそうな顔をされたが見ていないふりだ。


「戸田ウザい。他を見ろ、他を」


 構うな、と言われているのだろうが、無視。成田も諦めたように、手札から判断を下す顔になる。
 別に、特別成田と仲良くする理由があるわけじゃない。
 ただ、一言で言えば――責任感、のようなものだろう。


「次はブラックジャックやらね?」
「俺、ブラックジャックのルール分からないから誰か説明してくれ」
「えー、ごーは分かんないの?」
「五葉は意外と知らないことが多いな」
「興味があることしか知る気がないからね。ポーカーだって、有名なのしか分からない」
「やる友達いなかったんだろー」
「そう、そのとおりっと。あー、三枚捨てると面倒だ」
「ストップ」
「え、もうストップ? 早っ」


 この四人は、決してクラスから浮いているわけじゃない。だけど、傍目から見れば、四人で完結してしまっているような部分がある。
 特に成田なんかになると、他の人間とは滅多に喋らない。周囲も話しかけようとはしない。話しかけにくいのだ、成田の雰囲気は。
 でも、だから――というわけじゃ、多分、ないのだろう。


「ストレートフラッシュ」
「あー、いつも不幸の紫音に舞い降りたか……なんか悔しいな」
「どうする? もっかい?」
「えー、ブラックジャックやろーよ」


 単純に、この四人といたい。
 一緒にいると、この四人は楽しい。独特の雰囲気が、俺は嫌いじゃないんだ。


「戸田」


 俺の顔なんて横目ですら見ずに、成田が話しかけてくる。


「ブラックジャックのルール、教えてくれ」


 なんて偉そうで、それでいて控えめな言い方だろう。見れば、井浦は笑いを噛み殺している。紫音もちょっと笑ってるっぽい。


「はいはい」


 俺は別に、歓迎されていないわけじゃないんだ。ただ、慣れていないだけ。
 そう思って、とりあえず、成田の前に置いてある手札に触れた。









(戸田、これってどうなってんだ?)
(あー、これはこうで……)
(五葉が教えてもらっているって、新鮮な光景だな)
(そうか?)

















――アトガキ
 いつか空五を書くということを意識してしまったせいか、五葉と仲良しな空。
 空というキャラを生み出したのは私なのに、素晴らしくキャラが掴めてません。コイツは五葉以外の三人と仲が良いのか?
 で、微妙な立場に。
 空は良い奴です。人でなしな五葉を構ってくれる奴です。そして陸上部の部員です。短距離です。
 とりあえず、宣伝しておきました☆

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ