その七

□僕と幽霊の奇妙な共同生活
1ページ/1ページ




※パラレル注意

「なァ惣右介」
 僕の家には、一匹の地縛霊がいる。
「惣右介―、俺めっちゃヒマやねんけど」
 僕がこの家に来た頃には既にいた。いわば僕から言うと先住民だ。彼は僕の前の前にこの家で暮らしていて、この家で死んだらしい。死因は本人曰く「可愛い女の子の機嫌損ねてな、刺されてもうてん」だそうだ。彼は嘘つきの気があるので僕は信用していないが、とにかく、彼はこの家で死体になったのだそうだった。
「何お前無視しとんねん。そんなにおもろいサイトなんか? やらしいサイトちゃうんか?」
 地縛霊は騒がしい。
 とにかく、よく口が回る。始終何か喋り続けているような気さえする。
「テレビでも見ていたらどうですか」
 うるさくなって僕が答えると、地縛霊は嬉しそうな顔をして、僕の顔を覗き込んだ。
「やっと答えたな、惣右介」
「誰かさんが騒がしすぎるんですよ」
「なあ惣右介、俺、プリン食べたいねん」
 この地縛霊は何故なのか、プリンが好きだ。物が食べられないはずなのに、プリンだけは食べられるらしい。だから僕はいつも、この部屋から出られない地縛霊に、プリンを買うよう頼まれる。今がその例だ。
「僕は忙しいのですが」
「なんや? レポートでも書いとんのか?」
「そういうところです」
「せやかて俺プリン食べたいしなー」
「……」
「なあ、惣右介―」
 僕の頬を右から引っ張ったりしながら、地縛霊がわいわい騒ぐ。僕は観念して両手を挙げた。
「分かりました、買って来ますよ」
「ホンマか」
「はい。いつものでいいですね?」
「頼んだわー」
 財布だけ持って家から出て、ドアを閉めて振り返る。地縛霊はここまではやって来ない。僕はふう、とため息を吐いた。
 わいわいと賑やかな地縛霊――彼に振り回されるのが嫌じゃなくなってきているのは、此処だけの話だ。









めっちゃ楽しかったです。
プリンだけ食べられるという設定はこの前読んでた「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」の設定より。可愛かったのでパクってみました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ