00部屋その六

□相互依存
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「ねえ晁蓋、君は本当に僕なんかでいいの?」
 晁蓋の、よく見たら整っている顔を覗き込みながら、僕はそう訊いた。
「君なら僕なんか選ばなくってもいいのに」
 晁蓋は、顔立ちが整っている。面倒がりだけどやるときはやる男だし、腕は立つし、何と言っても保正だ。村ではとても人気がある。
 そんな、晁蓋。
 僕の幼馴染にして、恋人、らしい人。
「晁蓋、」
 形の良い鼻を見ながら名前を呼ぶと、晁蓋は口から煙を吐き出して、煙管を傍にあった台に置いた。
「当たり前だろ」
 そう言いながら伸びて来た手に逆らわず、僕は晁蓋の胸の中に倒れ込む。広い胸板からは、汗のにおいと、煙草のにおいがした。
「俺はお前が良いんだよ」
「……そう」
「お前こそ、いいのか?」
「何が」
 僕の頬を両手で挟む晁蓋に、今度はこちらが首を傾げてみせる。すると、晁蓋はにやっと笑って、僕の頬に口付けた。
「俺より有能なボス、いくらでもいんだろ」
「そんなことないよ、晁蓋」
「嘘吐け。替天行道とか、ちょっと気になってるくせに」
「それは晁蓋の方だよね?」
「俺は確かに興味があるけど、お前が来ないなら行かない」
「僕が逆らえないって知ってるくせに」
 不安定な体勢を整えるように、晁蓋の肩に手を乗せる。晁蓋は笑って、「誘うなよ」と僕の首を撫でた。
「するか、呉用」
「はいはい」
 カチャリと眼鏡が取り払われて、長椅子の上に押し倒される。
 ぼやけた視界に映り込む晁蓋の髪に触れて、僕は、口付けを受け入れた。
 僕は君に依存してる。
 君が僕を必要としてくれることに、君が僕を愛してくれることに。
 だって、君が傍にいるだけでこんなにも嬉しいんだよ、晁蓋。






ベタベタする晁呉の話。砂吐! こういう話ばっかり書いてる!

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