00部屋その六

□所有される偽善者
1ページ/1ページ





「お前たちが綺麗過ぎて、俺は時々嫌になるよ」
 俺の言葉に刹那が顔を上げる。無言の瞳。俺は造った顔で笑う。
「お前たちはみんな綺麗だ。まっすぐ過ぎて嫌になるくらい、な」
「……ロックオン」
「俺だけじゃない、多分兄さんもそうだったはずだぜ」
 見えない血の色に染まる手の平。俺の手も刹那たちの手も、たくさんの人の死に塗れている。それでも彼らは輝きを失わない。殺す前から失ってしまっていた俺とは違って。
「お前たちは兄さんを神聖化し過ぎだ」
 きっとあの人もそうだった。兄さんの手もたくさんの血の色に染まっていた。皆が慕ってやまなかったであろう笑顔は欺瞞に塗れていて、それは多分、あの人が望んだ自分の姿。
 俺が知る笑顔とこいつらが知る笑顔は、多分、違う。
 俺が知る笑顔はこいつらの笑顔と同じもの。輝くもの。こいつらの知る笑顔は、輝きを纏うように造られたもの。
「お前は」
 俺の横顔に、刹那は言った。
「あいつのことが、大事だったんだな」
「はぁ?」
「お前の知るあいつを、お前だけで独占していたい。……違うか?」
 そう問う目は相変わらず静かで、うすら寒い気持ちになった。
「それは、イノベイターとしての直感か?」
「分からない」
「じゃあ違う。否定だ。俺はあの人を独占したいなんて思っちゃいない」
 思っているのはお前たちの方じゃないのか?
 そうだ、俺は兄さんを独占したいなんて思っていない。あんな人のこと、そんな風には。
「あの人は、俺を置いて逝っちまったんだぜ?」
 仲間より誰より死者を選んだ兄さん。生きている俺よりも死んだ家族を選んだ兄さん。金はたくさんくれたのに、死体一つ残してはくれなかった。こいつらには思いやりと笑顔をくれたのに、俺には心の欠片もくれなかった。
 だから違う。俺は兄さんを独占したいなんて思っちゃいない。だって、最初から所有すらしていなかったのだから。
「だから、だろう」
 ああ、違う。違うのに。
 そうだとしたら、この灰を圧迫するような煙は、一体何だと言うのだろう。









結局ライルはアリーを殺したわけだけど、家族の死をどう思っているのかがハッキリと描かれていなかったじゃないですか。アニューのことがあったからだろうけど。
だからその辺りは本人の中でもハッキリしていなかったんじゃないかな、特にニールに関しては、と妄想。
一応二期後です。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ