00部屋その六
□君が僕にくれたもの
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『俺は銀城。お前は?』
『……月島』
『月島秀九郎』
出逢ったとき、僕らは孤独だった。
だから僕は銀城に惹かれた。同じ孤独の匂いをかぎ取って。
銀城は不思議な人間だったけど、一緒にいれば幸せだった。心強かった。僕はひとりじゃないんだ、と思えたから。
銀城、
銀じょう、
ぎんじょう、
出逢った頃は子供だった僕も、次第に大きくなり、やがて青年になった。
不思議と女性に興味は持てなかった。
本というものを通じて覗き見る世界に、満足してしまったのかもしれない。
あるいは。
「僕さ、銀城がいれば他に誰も要らないよ」
「言ってろ。そのうち俺以外に大事な奴ができる」
銀城に、満足していたのかもしれない。
銀城、
銀じょう、
ぎんじょう、
銀城のことが好きだった。様々な意味で。
銀城は僕の世界の全てだったんだ。
だから、失えばどうなるかなんて、考えたこともなかった。
銀城がいなくなることがあるなんて、考えたこともなかった。
違う。
考えたくなかったんだ。
僕は銀城が好き過ぎて、銀城のいない世界なんて、想像しようともしなかった。
想像するのが、怖かったから。
銀城、
銀じょう、
ぎんじょう、
「……獅子河原君」
「何ですか、月島さん」
「僕さ、とっても銀城のことが好きだったんだ」
「知ってますよ。だって月島さん、いつも銀城のことばかりだったじゃないッスか」
ねえ、銀城。
君のいない世界なんて想像したことがなかった。
でも、事実、君はいなくなってしまった。
君は僕を助けてくれた。でも、僕は君を助けられなかった。
君を助けられなかった僕は、君がくれたものを抱えて、生きるしかないんだ。
銀城。
本当に、ありがとう。
54巻読み終わった勢いで書きました。
月島は能力だけ失って生き延びたと信じてる。