00その弐

□星の王子様
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 たとえるなら、彼は王子様だった。そして僕が飛行機乗り。
 彼は寂しがり屋だった。そして、純粋。何処までも冷めた視点の持ち主のくせに、何処までも愛を求める純粋さを持ち合わせていた。だから、様々な惑星をふらふらと回ったのだ。
 そして僕は、飛行機乗りだった。本当はセルティの元へまっすぐに向かうはずだったのに、砂漠に不時着してしまった。
 そして僕らは出逢った。
 偶然の出会いだった。
 彼は星の王子様。たくさんの人間に出逢った。でも、彼の気を惹く人間は一人もいなかった。僕が第一号だったらしい。
 星の王子様の笑顔は、純粋で、綺麗だった。でも、同時に、何処か寂しげにも見えた。
 でも、それを彼が見せる相手は、僕しかいなかった。
 彼は出逢えなかったのだ。友達――狐に。
 本当なら、僕がそれになるべきだった。だけど、僕にはなれなかった。何故なら僕には愛という飛行機があって、セルティという目的地も存在していたから。僕にとっての臨也は、星の王子様は、砂漠で出逢った相手以上になれなかった。
 狐。
 王子様と狐。
 臨也は狐を得られたんだろうか。
 最初は、少しの距離。それから少しずつ近付く。狐は王子様にそれを教える。そして彼らは友達になる。
 でも、惜しむべきは、彼にはそれを教えてくれる人がいなかったってことなんだ。
 だから彼は友達の作り方を知らない。王子様はずっと独りぼっち。薔薇の元へも帰れない。薔薇は――彼の妹たちは、彼を必要としてくれているのに。
 ねえ、誰か臨也の友達になってあげてくれよ。狐になってあげてほしい。
「門田君」
「ん?」
「星の王子様って知ってる?」
「ああ」
「臨也はそれなんだよ」
「……そうか」
「だから、君が狐になってあげてよ」
 愛を知らない王子様は、ずっと愛を探して彷徨い続ける。広い宇宙の海を、愛だけ求めて泳ぎ続けるんだ。
 誰かが止めてあげなきゃならない。
 だって、
「……お前がもう、狐だろ」
「違うよ、私は飛行機乗りだから」
「何言ってんだ。あいつの初めての友達は、お前しかいねぇよ」
 ぽん、と門田君が俺の肩を叩く。
 俺は、涙が出るのを感じた。
 おかしいな、セルティだけでいいはずなのに。私には飛行機と目的地があればいいはずなのに。
「……臨也」
 星の王子様から、僕は離れられないみたいなんだ。







Drrr×文学作品企画「此れがひとと謂ふものです」様へ提出!
タイトル見た瞬間に「新羅と臨也だ!」と浮かびました。いつもと毛色の違う作品。

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