00その弐

□あなたの読む本になりたい
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「雛森君?」
 吉良君に名前を呼ばれて、慌てて我に返った。
「な、なに?」
「いや、ぼーっとしているように見えたから……。どうかした? 疲れた?」
 本屋さんを回るデートの後、場所は吉良君のお家。私たちは向かい合って本を読んでいた。吉良君は短歌の、私は詩の詩集だ。
「う、ううん」
「なら良かった」
 ほっとした顔で吉良君が笑う。とくん、と胸が音を立てた。
「……吉良君」
「何だい」
「吉良君の髪、きらきらしていて綺麗だね」
「そんなこと、ないよ」
 私は、吉良君に見とれていた。
 綺麗な色の髪。目。私よりも色の白い、綺麗な肌。吉良君は綺麗だ。昔も、今も。
「私、好きだなあ、吉良君の髪」
「ありがとう」
 本に目を落として、吉良君が笑う。吉良君の視線を独占する本に、ちょっぴり嫉妬した。視線を独占できるというのなら、私は、吉良君が読んでいる本になってしまいたい。
「吉良君、好きだよ」
 思わず口にしてしまってから、笑う。
 聴こえなかったふりをする吉良君の耳は、真っ赤だった。






この二人可愛い。

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