00その弐

□お菓子よりも甘いもの
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※学生パロ









「シャフト、お前にとっての楽しい話をしてやろう! よく聴け!」
「はいはい、何ですか?」
「甘いものは好きか?」
「まあ、好きでも嫌いでもないですけど……」
「よし、じゃあ決まりだ。今日の放課後にクレープ屋に行く。俺の奢り。以上だ。分かったな? 分かったよな?」
「分かりましたよ。……って、え?」




 某日放課後。
 学校の門を出たシャフトは、何故か先輩であるグラハムに連れられて商店街を歩いていた。
「あの、グラハムさん……」
「楽しい、楽しい話をしよう! 俺は甘いものが好きだ! もしかしたら前世が砂糖だったんじゃないかと思うくらいには甘いものが好きで、勿論和菓子も好きなわけだがケーキやクレープも大好きだったりする! 俺はクレープが食べたい。食べたくて仕方がない。俺の血液は砂糖水が流れているんじゃないのか? ヤバいな、それはとても大変なことじゃないか。世紀の大発見だ。どうやら俺はサトウキビだったらしい!」
「…………」
 二人の目的は、グラハムが愛を主張しているクレープを食べに行くことである。何が悲しくて男子高校生二人でクレープを食べに行かなくてはならないのかという話だが、グラハムに言わせると「ラッドの兄貴を見ていて『後輩に何か奢る先輩って格好良い』と思ったから自分も何か奢ってみたくなった(要約)」かららしい。目的地がクレープ屋であるのは、ただ単にグラハムが食べたいだけだろう。
「でも、いくらなんでもクレープじゃなくても……」
 目的のクレープ屋を見つけたシャフトは、頭痛を感じてふらついた。
 そのクレープ屋というのは、最近商店街にできたばかりのテイクアウト式の店だ。手頃な値段で買えるからか、同じように学校帰りの学生たちが行列を作っている。しかし、彼らとグラハムたちには決定的な差がある。あちらはカップルか女性の集団。こちらは男二人。何が悲しくて男二人でクレープを食べなくては奈良なのだ。シャフトはちょっと悲しくなった。
「あの、グラハムさん、帰りませんか……?」
「嫌だ」
 こういうときに限って、グラハムの返事は簡潔だ。どうやら余程クレープが食べたいらしい。こうなると、シャフトに逃げる方法はない。
 シャフトは観念して行列の最後尾に並んだ。




 クレープは美味しかった。だが、精神的なダメージの方がずっと大きかった。
 グラハムはクレープを食べることができて上機嫌な様子だが、対照的にシャフトはぐったりとしている。グラハムは宣言通り奢ってくれたが、そんなこと、シャフトにとってはどうでもいい。ただ、彼が思っていることは一つ。
「二度と行くもんか……」
 女子の集団から好奇の視線を浴びつつクレープを注文するなんて、拷問以外の何物でもない。どこか大事なところが麻痺しているグラハムとは違って、シャフトはれっきとした一般人である。不必要に目立つことなど望んではいない。
「どうしたシャフト、調子が悪いのか? もしかしてお前は甘いものが苦手だったのか? いや、でもそんなことはないだろう。たとえ仮に苦手だったとしても、折角奢ってもらった物に文句を言うほどお前は非常識な奴じゃないはずだからな。というか、言ったら殴る」
「言いませんよ、そんなこと……」
「そうか。なら良かった」
「はい」
「美味かったな、クレープ」
「ええ、まあ……」
 俺も貴方みたいに鈍感に生まれたかったですよ、と皮肉を続けようとしたシャフトだったが、振り向いたグラハムの顔を見て口を噤む。
「また行くぞ、シャフト」
「……そうですね」
 満足げな、愛らしい彼の笑顔。それさえあればあの程度どうってことない、と考えてしまうシャフトは、もうよほど手遅れなのだろう、と自分の思考回路に苦笑しながら頷いた。
「今度は俺が奢りますよ、グラハムさん」










久々過ぎる100000打の更新で、「学生シャフグラで放課後」でした。
放課後デート! クレープ屋に行かせたい! と思ったのは学校の近くのクレープ屋が非常に気になっていたからです。あと、クレープを頬張るグラハムの姿を想像して悶絶したというのもあります。

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