00その弐
□臨也ファミリー
2ページ/5ページ
あんな男、死ねばいいのに。
僕はそう思う。誰がどう思おうと、誰にそれを諌められようと、僕はそう思う。
あんな男、死ねばいいのに。
平和島静雄なんて、死ねばいいのに。
だって、平和島はイレギュラーだ。世界にとって、臨也にとってのイレギュラーなのだ。
イレギュラーは許されない。だから、あんな男、死んでしまえばいいんだ。
僕は平和島が嫌いだ。世界の誰より何よりも嫌いだ。嫌悪しているし、憎悪もしている。
だって、平和島がいるから、臨也は全ての人間を愛することができない。平和島は臨也の人類愛の邪魔でしかないのだ。
だから僕は、平和島が嫌いだ。臨也の邪魔をする平和島が、嫌いだ。
それに、もう一つある。
僕は臨也の特別になりたいとは思わない。 僕は他の人間と同レベルの価値でいい。それが臨也のためになるのなら、僕はそれを喜んで受け入れよう。
でも、だから、許せない。
臨也にとっての特別が存在するのが。
平和島は臨也の特別だ。たとえそれが憎悪であったとしても、臨也が平和島に抱いているのは、他の人間に対するのとは違う特別な感情なのだ。
許されない。平和島が特別であることは。
許されない。僕は特別ではないのに、他の人間が特別であることは。
だから僕は嫌いなんだ。あの男――平和島静雄のことが。
「死んでよ、平和島」
臨也とお揃いのナイフを手にした僕は、今日もあの男の腹筋にナイフを突き立てる。
「あぁ?」
平和島がサングラスの奥の目を細める。またか、と言いたげな顔をした後、血管を浮かび上がらせる。
「またテメェか、奈倉――」
「君なんかに名前を呼ばれたくない」
ナイフは刺さらない。僕はそれを知っている。それでも僕はこの男にナイフを向ける。
理由なんてない。
ただ、嫌いだからだ。
「君なんて、死ねばいいんだ」
ヤンデレ奈倉さん。奈倉さんが静雄を殺そうとするのは「臨也のため」であり「奈倉のため」です。