00その弐

□臨也ファミリー
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 あんな男、死ねばいいのに。
 僕はそう思う。誰がどう思おうと、誰にそれを諌められようと、僕はそう思う。
 あんな男、死ねばいいのに。
 平和島静雄なんて、死ねばいいのに。
 だって、平和島はイレギュラーだ。世界にとって、臨也にとってのイレギュラーなのだ。
 イレギュラーは許されない。だから、あんな男、死んでしまえばいいんだ。
 僕は平和島が嫌いだ。世界の誰より何よりも嫌いだ。嫌悪しているし、憎悪もしている。
 だって、平和島がいるから、臨也は全ての人間を愛することができない。平和島は臨也の人類愛の邪魔でしかないのだ。
だから僕は、平和島が嫌いだ。臨也の邪魔をする平和島が、嫌いだ。
 それに、もう一つある。
 僕は臨也の特別になりたいとは思わない。 僕は他の人間と同レベルの価値でいい。それが臨也のためになるのなら、僕はそれを喜んで受け入れよう。
 でも、だから、許せない。
 臨也にとっての特別が存在するのが。
 平和島は臨也の特別だ。たとえそれが憎悪であったとしても、臨也が平和島に抱いているのは、他の人間に対するのとは違う特別な感情なのだ。 
 許されない。平和島が特別であることは。
 許されない。僕は特別ではないのに、他の人間が特別であることは。
 だから僕は嫌いなんだ。あの男――平和島静雄のことが。




「死んでよ、平和島」
 臨也とお揃いのナイフを手にした僕は、今日もあの男の腹筋にナイフを突き立てる。
「あぁ?」
 平和島がサングラスの奥の目を細める。またか、と言いたげな顔をした後、血管を浮かび上がらせる。
「またテメェか、奈倉――」
「君なんかに名前を呼ばれたくない」
 ナイフは刺さらない。僕はそれを知っている。それでも僕はこの男にナイフを向ける。
 理由なんてない。
 ただ、嫌いだからだ。





「君なんて、死ねばいいんだ」







ヤンデレ奈倉さん。奈倉さんが静雄を殺そうとするのは「臨也のため」であり「奈倉のため」です。
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