00その弐

□君と書いて恋と読んで僕と書いて愛と読もう
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「好きなんだ、京平」
 そう、好きなんだ。
 俺がそう口にすると、京平は決まって同じ顔をする。困ったような、呆れたような、照れたような顔。
「馬鹿、餓鬼のくせに調子に乗るな」
「本気だって。俺は本気で京平のことが好きなんだよ」
「ハニーたちはどうした」
「ハニーはハニー、京平は京平だ」
 ハニーたちに対するのと京平に対するのは、ちょっと違う。
 ハニーたちは、一緒にいると楽しい。可愛くて、ふわふわして、幸せになれる。
 でも、京平との時間は、必ずしも楽しいとは限らない。一緒にいるだけで緊張して何を言えば良いか分からなくなるし、京平が俺を子供扱いするのは嫌だ。でも、後から思い返すととても幸せに思えるんだ。会えない時間が辛くて堪らないほどに。
 どっちも好きだ。でも、ちょっと違う。
 ハニーたちのことは「好き」で、
「じゃあ、こう言うよ」
 京平のことは――
「俺は、京平に『恋』してる」
「千景……」
「俺さ、恋したのは京平が初めてなんだ。こんなに苦しいのも、ドキドキするのも、京平が初めてだ」
 手を伸ばして、そっと京平の顔に触れる。引っ張ってニットを脱がすと、普段とは違う京平の顔がよく見えた。
 困惑した、真っ赤な顔。
 いつもは格好良い京平が今日は可愛く見えて、思わず「かわいい」と呟く。睨まれた。
「お前な、年上の男相手に『かわいい』とか言うか?」
「可愛いから言ったっつーの。京平可愛い。めちゃくちゃ可愛い」
「……千景、頼むからもう黙ってくれ」
 真っ赤な顔で言われても、説得力も何もない。
「じゃあ、『かわいい』はやめるわ」
 その代わり、俯いた京平の額に口付けて、俺は京平の両頬を挟んだ。
「なあ、京平」
 じっと目を見ると、「……なんだよ」と渋々ながらに視線が合わさる。
「京平が恋でさ、」
 鼻の頭に、キス。
「俺が、愛。それで良いだろ?」
 お次は、と頬に口付けようとすると、京平の職人らしい掌でそれを遮られた。
「な、に、が、だ……!」
 ギリギリと必死で押し返そうとする京平に抑え込まれ、質問に答えることすらできない。諦めた俺は、ちゅっと音を立てて京平の掌にキスし、京平の手を口から外した。
「だからさ、俺たちはセットってこと」
「意味が分からん」
「俺も分からねぇけど、でも、京平は特別なんだよ。ハニーたちとはもっと違う、特別なんだ」
 ハニーたちとは違う。俺は、京平としか、こんな気持ちにならない。
「京平は、俺のたった一つだから」
 だから、京平にとっての俺も、そんな存在だったら良い。
 なあ、と俺が笑うと、京平はいつもの微妙な顔でこっちを見て、耳まで真っ赤な顔でため息をついた。
「……勝手にしろ」
「よし、勝手にする」
「キスはするなよ」
「え、京平なんで分かったんだよ!?」
「……お前の考えることくらい大体分かる」
「マジで!? 一心同体じゃん!」
 嬉しさのあまり抱きつくと、体勢を崩してソファに倒れ込んだ京平は、犬にするみたいに俺の頭をわしゃわしゃ撫でる。その気持ち良さに目を細めながら、俺はどさくさにまぎれて京平にキスを仕掛けた。
「京平、愛してる」
 結局俺が何を言ったかったのかというと、だ。
 俺と京平は代わりのない存在同士で、
 そんな京平と一生こういう関係でいれたら良いな、という、わけだ。
「……俺もだ」
 身も心も溶けて、一緒になってしまうくらい、ずっと。








六門六企画「年下彼氏」様へ提出!
RADWIMPSも「ふたりごと」も好き過ぎて超張り切りました。ここまでBLっぽい話久々に書いた……。
砂月は基本的にいちゃいちゃしているのが好きです。そして六門はいちゃいちゃさせたくなると気付きました。
もっと六門六が広まれば良いと思います! 以上!


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