00その弐

□魔王は嘯く
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※ネタバレ注意







 無界の里が一夜にして滅ぼされた、その後のこと。
 髑髏城の天守閣には、二人の男の姿があった。
 片方は、この城の主である、「天魔王」と名乗る男。壮麗な衣装に身を包んだ彼は、杯を傾けて月を眺めている。
 もう片方は、無界屋蘭兵衛――いや、森蘭丸。ワインの水面を眺める目はどこか虚ろで、彼が薬の影響下にあることを示していた。
「して、蘭丸」
 唐突に、天魔王が口を開いた。
「調子はどうだ?」
 問われた蘭丸は、グラスの中のワインを呑み干して答える。
「良好だ」
「本当に、か?」
「何故疑う?」
「お前は昔から嘘が巧かった」
 言いながら、天魔王は信長の骨で作った杯を置いた。そして、音も立てずに蘭丸へと歩み寄ると、その顎を掴んで蘭丸の切れ長の目を覗き込む。
「何のつもりだ、天魔王」
 二人の顔の間の距離が縮まったことに蘭丸が眉を寄せると、天魔王は口の端を寄せて嗤った。
「なに、口付けようとしただけだが」
「何故?」
「何故でも良いだろう、蘭丸。……嫌か?」
「意味のないことは嫌いでな」
「はっきり言ったらどうだ、信長様以外と口付けたくはないと」
「……気付いていたのか」
「気付くとも。それだけの時間をともに過ごしていたではないか」
 蘭丸、と天魔王は熱の籠った声で呼んだ。
「考えてみろ。今となっては俺が天魔王、俺が天だ。あの方は俺、俺はあの方。俺と口付けることはすなわちあの方と口付けること。違うか?」
 天魔王の言葉に、蘭丸も薄い笑みを浮かべた。
「強引な理論だな」
「嫌か?」
「嫌ではない。……いや、どうでもいい」
 投げやりに言った蘭丸の笑みは、どこか自嘲しているかのようだ。
「今の私は死に損ないの亡霊だ。この身などあってないようなもの。どうでもいい、好きに扱え」
 ワイングラスを体から遠ざけ、蘭丸は、天魔王が畳の上についた手に自らの手を載せる。
 二人の視線が交錯する。
「では好きにさせてもらうぞ、蘭丸」
「ああ、好きにしろ、天魔王」
 言い訳のように口にして、それぞれ、嗤う。嘲るように、自嘲するように。
 押し倒された蘭丸の体が軋み、黒い髪が艶めかしく広がる。天魔王は熱くなる体を誤魔化しもせず、蘭丸の薄い唇を、貪った。











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