00その弐
□苦い、甘い
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「草薙さん」
バー「HOMURA」に入って来た八田は、現れるなりバーのカウンターに倒れ伏した。
「どうしたん? 八田ちゃん」
グラスを拭きながら草薙が尋ねると、彼はぺたりと頬をカウンターにくっつけたまま答えた。
「眠いんす」
「寝不足?」
「昨日の晩、ちょっと暴れ過ぎて……」
昨日の晩。そう言えば八田と繋がりのある占い師が八田に頼って来ていたな、と草薙は思い出す。
「コーヒー淹れたろか?」
「頼んます」
「ミルクと砂糖は多め、やんな」
「子供扱いはやめてくださいよ。俺だってブラックくらい飲めます」
「強がらんとき、前試して無理やったやろ?」
「前は前、今は今、じゃないですか!」
顔を上げて、じっと草薙を見る八田。草薙はグラスを片付けながら、仕方がない、とため息をついた。
「後で泣いても知らんで」
目の前に出されたなみなみと注がれたコーヒーを、八田はじっと見つめた。
そして、気合いで。
「ふっ」
勢いよくそれを飲み干した八田だったが、次の瞬間、大きく顔を歪めた。喉が飲み込むのを拒むのを無理して流し込み、彼ははあ、とため息をついた。
「口の中、まだ苦いやろ?」
苦笑しながら草薙は言うと、カウンターの内側にあったものをつまみ上げて口に含み、次の瞬間、
「!?」
八田に口付けた。
草薙の舌がゆっくりと八田の口の中に侵入し、そして、乗せていたものをころんと移し変える。
目的を達した草薙はすぐに八田の顔から離れ、にこり、と笑った。
「八田ちゃん、どうや、口治しの角砂糖は」
言われた八田は、顔を真っ赤にしながら角砂糖を噛み砕き、勢いよく立ち上がった。
「眠気覚めたんで、ちょっと出てきます!」
早足に店内を横切ってバーから出て行く八田を見送った草薙は、カウンターに頬杖を突いて微笑んだ、
「可愛いなあ、八田ちゃんは」
一方、店内の隅でゲーム大会を繰り広げていた鎌本たちは、げんなりした顔でそれを見ていた。
「俺たちもいるんだけどな……」
初書きKでした。
まだあまりキャラが掴めていないので偽です。すみません。