00部屋その五

□君に知られたくない幾つかのこと
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「一角!」
 かけた声に、返事はなかった。
「一角、寝てるのかい? 一角?」
 声をかけて、君の部屋の入口を開ける。何度も何度も訪れた君の部屋。殺風景なそこには、僕が置き去りにする本だけが誇りに塗れて点在している。君は物をお持つことを嫌うから、君の部屋には僕のものばかりがある。
「……起きてる?」
 その隅っこで寝ている君を見つけて、そっと肩を揺する。一角。名前を呼んでみても、君は目を覚まさない。
「……寝てるのか」
 君がそうして眠りこけるのは僕の前だけだということを、僕は知っている。長い付き合いだからだろうか。それとも、僕だからなのだろうか。そこまでは知らない。でも、僕だけが見られる君の寝顔に、僕は少しの優越感を抱いている。僕は他の人より、君に近い場所にいるんだ。
 君の体を少し追いやって、僕は君の隣に座った。君は変わらず寝息を立てている。その頬にそっと触れても、君の表情は変わらなかった。
 僕は君に隠し事をたくさんしている。
 たとえば、僕の刀の能力。これは君どころか誰も知らないことだ。僕はこっそり鍛練をして、そうして刀の能力を手に入れたから。皆と一緒に努力するなんて性に合わない。そう思ってこっそりやっていたのが本当に良かったと思った。これだけは、君にも知られたくなかったから。だって、知ったら君は、僕を軽蔑するかもしれないからね。
 それから、もう一つ。これは本当に本当に、誰にも知られたくないこと。
 僕がどんなに君に依存しているかだ。
「ねえ、一角」
 好きだよ、という言葉は、いつになったら音になるんだろうか。いつもいつも、その言葉は僕の胸の中で弾けて消えるんだ。音になることなんてなく、泡のまま、静かに静かに胸の奥に沈殿していく。
 君に知られたくないこと。
 君が好き過ぎて、僕は君に幾つかの大事なことを隠している。
「起きてよ、一角」
 君に知られたくないこと。
 いつになったら、僕は君に全て明かせるんだろうね。
 そのときには、僕が全て話したときには、君は笑ってくれるんだろうか。
 いつものように、「弓親」と、笑って名前を呼んでくれるんだろうか。
 ねえ、一角。
 こんなの思うの、君だけだよ。









一角と弓親が好きだ!という勢いで書いた。

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