00部屋その五
□僕の影は嘘が嫌い
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「素直になれよ、俺」
もう一人の俺はそう言って、俺の胸をトンと叩いた。
「雛森が欲しいんだろ? なあ」
ふふん、と笑う俺の顔は、別人みたいに歪んでいる。これが俺か? 寒気が背筋を駆け抜けた。
「何言って……」
「ずっとずっと好きだった。強くなって、一人の男として見てほしかった。なのに現実はどうだ? 雛森の中でのお前は、いつまで経っても幼馴染のまま。雛森はお前じゃなくて藍染を選んだ。お前は雛森にとって男じゃないんだ」
「やめろ、」
「分からせてやろうぜ? 俺は男だって。力があるんだって。なあ?」
「やめろ、やめろ、やめろ!」
もう一人の俺の唇が、柔らかく俺の首筋を噛む。がぶりという痛み。口元から血をしたたらせたそいつは、俺だとは思えないくらい、陰虐さに満ち溢れていた。
「俺たちはずっと、雛森が欲しかったんだ」
もう一人の日番谷は欲に素直そうだなと思って。