00部屋その五
□ひどいひと
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「好きなんです、戌井さん」
私がそう言うと、戌井さんは綺麗な笑顔で答えた。
「うん」
「好きなんです」
「うん」
私が何を言っても、戌井さんは「うん」としか答えない。そのわけを、私は知っている。
優しいのだ。戌井さんは。
だから私を傷つけまいとする。
私を傷付けないために真実を隠して、でも嘘は吐けなくて、曖昧なことを言う。
「潤ちゃん」
「はい」
「ありがとう」
ああ、どうして戌井さんはそんなに綺麗に笑うんだろう。
ひどいひと。
そんなに綺麗に笑うくらいなら、どうか、私を好きになって。
越佐フィーバー!