00部屋その五

□面倒な君
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「機嫌直せよ、リルカ」
 銀城の言葉に、リルカはそっぽを向いて口を尖らせた。
「なに、あたしが不機嫌だって言いたいの?」
「事実そうだろ」
「そんなことないわよ。なに? 心当たりでもあるの?」
 そう言いながら銀城を見るリルカの視線は、ひどく反抗的。これは相当怒ってるなと、銀城はため息をつく。
「……遅れて悪かった」
「それだけ?」
「本当にすまないと思ってる」
「すまない、じゃないわよ。まったく、デートに遅れてくるなんて、どういう性格してんの?」
「デートだったのか?」
 リルカの言葉に素直な驚きを表すと、リルカは更に怒ったような顔をして、銀城の髪をぐいと引っ張った。
「最低!」
 こうなったらもう手は一つしかない。銀城は諦めて、自分の財布の中を思い出す。千円札が三枚。急いで出て来たためそれだけしかないが、それでも、ありったけ使えばどうにかなるはずだ。
「……リルカ」
 銀城は小柄な恋人の名前を呼んで、その体を抱き寄せた。
「今日は奢る」
「当ったり前でしょ!」
 誇らしげな表情と、突然の銀城の行動に赤くなる頬。その両方を愛おしく思いながら、銀城は「参ったな」と呟いた。
「俺のお姫さまは我儘で困る」

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