00部屋その五

□紳士淑女の晩餐会
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「スンスン」
 皆さん知っておりました? テスラが女を呼ぶときの声って、とても甘いんですのよ。誰に対してでも同じ。アパッチに対してもミラ・ローズに対しても、ハリベル様に対しても変わりませんの。
「何ですの、テスラ」
 私はその声が大嫌いですの。お前は女だって言われてるみたいじゃありません? テスラはノイトラと違って女を蔑視はしておりませんけれど、それでも差別主義者なんですのね。だって、「女はか弱い存在」とでも言いたいようにしか聴こえないのですから。それが男と言う生き物なのでしょうか。ああ、私は男と言う生き物が大嫌いです! 嫉妬深い女も大嫌いですけれど。
「そんなところで何を?」
「別に何もしておりませんわ」
「寒くはないのか」
「ありませんわ」
「隣に行っても?」
「お好きにどうぞ」
 いちいち私の許可を取りたがる、優しい優しいテスラ。それはきっと手順なのでしょう。女と近付くための。でも哀しいことに、この男には紳士の手順はあるけれど、狼の下心がありませんのよ! テスラの優しさには混じりけがない。それって、とても気持ち悪いと思いますの。
「他の二人は?」
「あの二人は食事に時間がかかりますの、私と違って」
「そうか」
「貴方こそ、ノイトラはどうなさったの?」
「あの人は僕を必要としていない。貴女たちの関係と違って」
「でもそれで構わないのでしょう、貴方は男なのだもの」
「僕は男じゃないな。少なくとも、ノイトラ様ならそう言うだろう」
 どうしてテスラはこうなのかしら? ノイトラとテスラを足せば、きっと完璧になるのでしょうね。完璧な男。紳士の手順と獣の暴力を併せ持ち、そして、女を弱い生き物と蔑んでいるのだわ。そして言うのね、「女は自分が守らなくてはならない」と! なんと馬鹿馬鹿しいのでしょう。結局は全て喰らい尽くしてしまうくせに。
「風が出てきましたね」
「ええ」
 女は男なしでも生きていける。だけど男は女なしでは生きていけない。こんな言葉、ご存じかしら? この虚圏ではそれがとても顕著ですわ。生殖の必要がないのですから。ですから女に男は必要ありませんけれど、誰かより優位に立ちたい男は、女を求めるのですわ。それが動物の本能なのかしら。それとも、中途半端に残った人間の思考? どちらにしてもくだらないのですわね、男と言う生き物なんて。
「貴女の髪も袖も裾も、全て風の中にいるためにあるようだ」
「あら、そう」
 テスラは優しい言葉を女に投げかけますわ。まるでそれが義務であるかのように。口説く気などないくせに、気障な紳士は淑女をエスコートしたがるものなのかしら?
「貴方って本当にフェミニストですわね、テスラ」
 袖で口元を隠して、おほほほと嘲笑って差し上げました。そしたらテスラが何と言ったかご存じ?
「貴女は嘘つきだ。僕が誰の従属官かを、知っているだろうに」
 そう言ったテスラは微笑んでいましたわ。清潔で高潔に、甘く甘く。
「フェミニストと紳士は違う。君はそれを知っているはずだ」
 そのとおりですわ。だって私も、フェミニストではなく淑女なのですから!






テスラとスンスンという組み合わせに目覚めた。

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