00部屋その五
□ニルハム・リハビリ場所
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キラキラと光るショーウィンドウ。明るい街並み。連れ歩く家族連れ。笑い合う恋人たち。サマーバケーションに浮かれた街は賑やかで、いつもそれは変わらない。
その中を歩く。ひとりで。
家族。恋人。友人。そのどれをも持たないグラハムはひとりで彷徨う以外のすべを知らない。茶色のコートをはためかせ。まるで夜を歩く亡霊のように、昼間の明るい世界を歩くのだ。
かつてここを歩んだことを思い出す。隣にひとりの男を連れて。その男はもういない。グラハムの傍に。そしておそらく、この世界の何処にも。
(ニール)
陽の光に映える優しい緑の瞳を思い出し、グラハムは無意識のうちに目を閉じる。開く。やはり誰もいない。隣を二人の青年が通り過ぎた。冗談を言いながら、まるでかつての二人のように。
グラハムはひとりだ。この世界の中で。
街は華やぐ。子供たちの笑い声が響き、恋人たちが会いの言葉を囁く。花屋の花がきらきらとひかり、誰もが幸せに見ていている。
(二―ル、)
君だけが、足りない。
リハビリ第一弾。第二期の後くらいで。