00部屋その五
□子供じゃない
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※現代、保護者と少年
俺じゃ駄目なのか、と刹那は彼に問いかける。声には出さない。心の中でだ。
彼の部屋の一番奥の棚の引き出しの中に何があるのか。刹那はそれを知っている。
おそらく、ニールはそのことを知らないだろう。知られたくないと思い、刹那もそれを告げたことはなかった。告げられるはずもなかった。
一番奥の棚、その一番下の引き出し。
そこには、彼のかつての家族の写真がある。
「……俺じゃ、駄目なのか」
その一ページを開いて、刹那は膝に顔を埋めた。
どこにでもあるありふれた家族の光景だ。父親と母親と、双子の少年と、幼い少女。皆満面の笑みを浮かべ、カメラに向かってピースサインをしている。彼らが誰なのか。訊いたことはないが、刹那にだって見当はつく。
そして、知っている。何年かけたとしても、刹那は彼らに勝てないのだと。
こんなにも好きなのに。言葉が、心臓を打つ。
俺はお前だけを見ているのに。
ニールが自分の姿に、家族に何を見ているのか、気付けないほど子供じゃない。愛されていると無条件に思えるほど、幸せな人間じゃない。
「お前に必要なのは俺じゃない」
代わりはいくらだっている。それが偶然自分だっただけだ。
色褪せた写真を撫で、刹那は自嘲気味に笑った。
「お前は俺を見てなんかいない」
それが耐えがたく、辛かった。
久々なので模索中……。