00部屋その五
□ティーパーティー
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焼き上がったマドレーヌを僕はかじる。焼き目は綺麗、味もばっちり。何より水分が抜けていなくてしっとりしている。思わず鼻唄を歌いながら、出来上がったそれらを皿に盛り付ける。見た目に気を遣い、美しく。
「クリスは面白いですね」
背を向けたリビングから、響きの良い綺麗な声。マドレーヌの柔らかさとは違う、冷たくて、滑らかな声。花ではなく大理石。僕はいつもそう思う。だけど、それを口には出さずに、隣で働くアデルに声をかけた。
「アデル、紅茶よろしく」
「はい」
紅茶はミルクティー。お菓子の甘さを引き立てるために、砂糖は少なめに。
今日の主役は紅茶じゃない、僕の作ったマドレーヌなんだから。
ココアと普通のものを綺麗に盛り合わせていると、ティムがヒューイの旦那に言う声が聞こえた。
「変なだけじゃないですか」
「それこそが面白いんですよ。矛盾している」
「はぁ……」
ティムの良く分からないと言いたげな顔が目に浮かぶようだ。くすり、と笑みがこぼれる。ティムの困った顔は面白い。それこそが彼の素の表情のようで、とても自然なんだ。やっぱり他のみんなも連れてくれば良かった。……あぁ、でもそしたらレイルが不機嫌になっちゃう。リーザも怖いだろうな。ところで、リーザはどうしていないんだろう。
僕が作ったマドレーヌを、紅茶と一緒にアデルが運んで行く。僕ら四人分のお菓子、四人のためのティーパーティー。
僕とアデルとティムとヒューイの旦那。
吸血鬼に美女、男と支配者。
童話の中になんて絶対にいない、とびきりの組み合わせだ。
「あの、……どうぞ」
「あぁ、悪い」
「ちょっと、作ったのは僕だからねー」
「知っていますよ」
キッチンから出て、テーブルにつく。ティムとアデルが隣同士なのは、ヒューイの旦那の気まぐれだろうか。なかなかに良いことするよね。
さぁ、声を揃えてお茶会の始まりの合図。
「「「「いただきます」」」」
今だけは、血も殺しも研究も関係ない。
クリス以外全員初書きという衝撃の事実……! 全然掴めない!
しかも英語のテストに書いてたから、なんか微妙な長さ……!