00部屋その五
□〜2011静臨過去ログ1
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「シズちゃんさぁ、」
臨也のヤローは、何処かを見ながら呟いた。
「俺のこと、抱いてみない?」
それはとても自然な言葉で、俺の耳をともすれば素通りしていくようなものだった。しかし、俺は臨也のことが大嫌いだからこそ、その言葉を耳の中に留めてしまった。
そして、意味が分かれば最後、猛烈な吐き気に襲われた。
「何のつもりだテメェ」
「ちょっと試してみたいんだよ。そういう意味で、自分の体がどこまで使えるのか」
「そこらのゲイバーにでも行けば良いだろ。新宿にたくさんあるんだから、此処に二度と顔みせんな」
「馬鹿だなぁ、シズちゃんは。同性愛者相手じゃ意味ないよ」
くすり、と見下したように笑う赤い瞳。暗く、鮮やかに、そして鈍くそれは光って、俺の瞳を確かに捕らえた。
気持ち悪いのに逃げられない。
コイツのそういうところが嫌いだ。
「それに、すぐ怒るせいで相手のいないシズちゃんに、ボランティア」
ボランティア。
あぁ、確かにコイツを抱くなんて御免だし気持ち悪いし死んでも嫌だ。滅茶苦茶にしてやったところでちっともスッキリしないだろうし、その程度でどうにかなるような奴だったらこんな話をしてこないだろう。
だけど、何よりムカつくのは、自分の体さえ使うとかいうコイツの考え方だ。
歪み切った考え方。気持ち悪いを通り越して殺意が湧いてくる。苛々するぶっ殺してやろうかこの腐れ頭。
その場に落ちていたコンクリートの塊を拾い上げて、投げつける準備をしながら、訊いた。
「テメェは嫌いな奴に抱かれても良いのか?イザヤくん?」
「だってセックスところは別物だろ?」
最低だ。
コンクリを投げるのをやめた俺は、舌打ちとともに代わりの言葉を投げかけた。
「この下種」
その言葉に微笑んだ顔は、厭らしく妖艶で矢張り吐き気がした。
最高に気持ち悪い臨也が書きたかった。