00部屋その四

□子守唄
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 慣れ合うのは好きじゃない。他人の体温は苦手だ。
 けれど、お前の香りは、嫌いじゃない。
「あらまあ」
 行為が終わると、お前はすぐに服を身につける。白い単衣。裸のままの俺は、いつもそれをじっと見つめる。柔らかい肌が、豊満な体が、殻に隠されていくのを。お前は俺の視線に気付き、子供に言うようにいつも咎める。
「服を着なさったらどうですか」
 俺はそれに気付かないふりをして、寝返りを打つかのようにしてお前の膝へと体を乗せる。先程まで触れていた腿に顔をうずめ、ゆっくりと目を閉じるのだ。
「更木隊長」
 困った、とでも言いたげな声音のくせに、お前はそれほど困っていない。それが証拠に、少し身を乗り出して俺の体に布団を掛けると、ゆらゆらと眠りについてしまう。睡眠へ落ちたお前の体はゆっくりと崩れて、そうしてお前の胸が俺の頬に触れる。
「あったけえな」
 確かな体温の中で聴こえる、お前の心臓の鼓動の音。どくん、どくん、どくん。それに耳を澄ましているうち、俺もだんだん意識がぼんやりとしてきて、お前につられるようにして、眠りの世界に落ちていく。慣れ合うのも、眠ることも嫌いだ。だけど、お前がいる場所でなら、俺はそれを嫌いにならない。
「卯ノ花、」
 耳の奥底で聴こえる懐かしい音に揺られながら、俺はお前と同じ世界へ行く。





母と子みたいな二人。夢見てます。

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