00部屋その四

□壊しちゃえ
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 世界なんて大嫌い。
 貴方を否定した世界なんて大嫌い。
 私には兄がいました。文武両道眉目秀麗、人望の厚い素敵な兄でした。私は兄が大好きでした。お兄様、お兄様と呼んでは、その人の後ろをついて回っておりました。
 兄は優しい方でした。
 でも、決して私に触れてはくださいませんでした。
 私が十歳を過ぎた頃、父が病気になりました。助かる見込みのない病気でした。
 後継ぎを指名する際になって、父は兄ではなく、私を指名しました。
『何故ですのお父様、お兄様がいらっしゃるではございませんか!』
『それはならんのだ、留美。何故なら、紅龍は妾の子だからだ』
 それが全ての理由でした。
 私は父の正妻の子供。
 兄は父の妾の子供。
 それだけで、私たちの運命は別々のものとなりました。
 それが理由だったのです。それがあったから、兄は私に触れようとしなかったのです。汚れが伝染るという、母の金切り声を避けるために。
 ああ、何ということでしょう。
 私が愛していた兄は、父が死んだその日に、私の兄ではなくなりました。王家の当主の私に、兄などいてはならないのです。
 兄はそれを静かに受け入れました。私の目には、そんな兄が、人形のように見えました。
 そして私は憎みました。兄をただの人形にしてしまった父と母を。そんな人間を生かすことを許し、どころか恵まれた境遇にすら置かせる、世界を。
 だから私は選びました。世界を変えることを。
 こんな世界、大嫌いだから。
「貴方のためよ、紅龍」
 私の言葉に、お人形の紅龍は答えません。私は大嫌いです。お人形になってしまった紅龍も。
 私は世界を変えましょう。いえ、壊して見せましょう。
 変わった世界の向こうには、私の父や母のような者の居場所はありません。人形のような兄の居場所も。
 けれど、そこにはあるはずなのです。
 私の居場所も、かつて私に微笑んでくれた、優しい兄の居場所も。








BSの再放送の影響で一気書き。

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