00部屋その四
□ただ、思いに身を任せて。
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これは読者なんて存在しない、俺がただ思うがままに喋るだけの無意味な話だ。
ラッドの兄貴は強い。とても強くて、とても格好良い。いつもテンションが高くて殺人鬼で、イッちゃってるけど意外と切れ者で、脳内から麻薬的な変な物質が大絶賛分泌されている。
そんな俺の兄貴分。
変な物質は俺にも当てはまってるだろうけど、とにかく兄貴は、俺的この世で一番素晴らしい、さいっこうに格好良い人間だ(あくまで俺的)。
人を殺した瞬間、ラッドの兄貴は楽しそうに満足げに笑う。その顔の痺れることと言ったら!俺が女だったら、完璧に惚れてしまっていただろう。
いや、俺は男だが、確かにラッドの兄貴に惚れ込んでいる。
兄貴の弟分でいたい。兄貴に嫌われたくない。兄貴のことが好きだ。万が一俺が死にそうになった時は、兄貴の手で俺を殺してほしい(勿論、愛を以って)。
俺は馬鹿だ。大馬鹿すぎて涙腺が崩壊しそうだ。
兄貴が愛しているのはルーア姐さんだけ。姐さんは兄貴の友達兼恋人兼婚約者。兄貴が心の底から殺したいと思っている女。兄貴に本気で殺されたいと思っている女。
俺なんかじゃ姐さんには敵いっこないし、正直二人は超お似合いだ。二人以上のカップルなんて、どこを探しても存在していない。
あぁ、悲しくて楽しい、とても複雑な話だ!
俺は兄貴のことが好きだが、ラッドの兄貴には幸せになってほしいから、それにルーア姐さんにも幸せになってほしいから、こうして見ていることしかできない。つらくてつらくてしようがないのに、離れることすらできない!
なんて中途半端なんだろう!!
それでも、人殺しと車の破壊をしている瞬間だけは、兄貴の隣に入れるんだ。俺だけが、兄貴と一緒にいれるんだ。
あぁ、馬鹿な俺。
車を壊した後はいつも、兄貴のことばかり考えている。
シャフトは、この話を聞いてから、乾いた笑いで言った。
「そういうもんなんじゃないですか、恋愛って」