00部屋その四

□今がずっとスローモーションで続けば良い
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 ずっと会いたかった貴方が居る。スローモーションでゆっくりと、貴方が列車から降りてくる。待ち望んでいた光景が、貴方が、今、そこに居る。夢にまで見ていた貴方が。
 探すまでもなく私を見つけた貴方が、笑みを浮かべて一歩踏み出した。目が、あつい。そのブルーアイ、燃えるようなブルーアイ、眩しく強烈で私の全てを奪っていくブルーアイと目が合う。唇が、全身が、震える。


「ラッド……」


 音にも成らなかった声なのに、貴方の耳は、ちゃんとそれを拾い上げた。貴方が手を、大きくてしっかりとした手の平を、こちらへ伸ばす。スローモーション。
 私は思わず駆け出した。


「ラッド!」


 スローモーションが終わる。リアルタイムに移り変わる。


「ルーア」


 耳が求めていた愛しい声が、私の名を呼んだ。手を伸ばす。腕を伸ばす。立ち止らずに、その太い首へとしがみつく。広い胸板へと鼻が触れたと同時、ぽたり、と涙がこぼれ落ちた。


「ラッド!!」


 叫ぶ。喉が、心が、打ち震える。
 貴方はいつものように笑う。そして、私の背中へと優しく腕を回した。


「待たせたな、ルーア」


 変わらない声。体温。足りない左腕だけは違うけど、でも、全部が全部愛しいまま。……違う、愛しいままなんじゃない。私が、どんなラッドも愛しているだけ。
 たとえ左腕が足りなくても。たとえ四歳年をとっても。たとえ一番強くなくても、貴方は私の愛しい人。
 ラッド、ラッド、ラッド、ラッド。
 私のいとしい、恋人。


「ラッド……早く、私を殺して」


 私がスローモーションで唇を重ねて言うと、貴方はもっと強く笑って、私をぎゅっと抱き締めた。
 あぁ、早く殺してほしい。
 でも、今は。今はしばらく、このまま貴方の隣に居たい。







 





 

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